植物は光や気温、乾燥などの変化に対応しながら成長します。また、虫や動物など、他の生き物の影響も受けています。最近の研究で、植物は風や手、虫などに触れられる刺激(機械刺激)を感じると、成長の仕方を変えたり、身を守る準備をしたりすることがわかってきました。さらに、葉が傷つくと特別な匂い(揮発性化学物質)を出し、他の植物に「危険がある!」と知らせることもあります。
しかし、植物がどのようにして刺激を感じているのか、刺激を感じたときに細胞の中では何が起こっているのか、まだはっきりわかっていません。特に、植物が受け取った情報をどのように細胞の中で伝え、成長や防御につなげているのかを調べることは、今までの観察技術では難しいとされています。
About research
研究紹介
About researchプロジェクト概要
ERATO豊田植物感覚プロジェクトでは、植物がどのような仕組みを使って、接触のような物理的な刺激や匂い(揮発性)物質のような化学的な刺激を植物の細胞の中で感じ、その情報を伝え、成長や身を守る反応につなげているかを、新しい観察技術を使って明らかにすることを目指しています。
研究背景

研究目的
このプロジェクトでは、新しい技術を開発し、植物が外の刺激をどのように感じて細胞の中で情報に変えているのかを調べます。特に、風や触れられること(機械刺激)、または匂い(化学刺激)が、植物の細胞の中をどのように伝わり、成長や防御の仕組みに関わっているのかを明らかにします。これにより、植物の知られざる感覚や環境に適応するメカニズムを、さらに深く知ることができるようになります。
Research group研究グループ
1. 光学装置開発グループ
「植物の感覚を蛍光でとらえる!」
植物の刺激応答をリアルタイムで「見える化」するための最先端イメージング技術を開発します。4Dイメージングや生態系イメージング技術を駆使し、個体を超えた生態系レベルまで、生きた植物で情報伝達を捉える技術を開発します。
グループリーダー : 須田啓(すだひらく)

2. 植物分子遺伝学グループ
「植物の感覚をDNAから探る!」
植物が環境の変化をどのように感じて適応するのか、そのカギを握る遺伝子を調べます。特定の遺伝子の役割を解明し、植物がどのように刺激を感知し、情報を処理するのかを明らかにします。
グループリーダー:中村匡良(なかむらまさよし)
サブグループリーダー:海老根一生(えびねかずお)
メンバー:八木 慎宜(やぎのりよし)、友井拓実(ともいたくみ)

3. 電気生理/構造生物学グループ
「植物の感覚を電気信号とタンパク質立体構造から読み解く!」
植物の細胞が電気的な信号をどのように発生させているのかを、関連するタンパク質の構造を解析しながら調べています。また、信号をどのように遠く離れた組織へと伝達しているのかを調査し、植物の情報伝達ネットワークの仕組みを解き明かします。
グループリーダー:竹田弘法(たけだひろのり)
サブグループリーダー:小川哲史(おがわさとし)

4. 生物物理学グループ
「植物の感覚を分子レベルで紐解く!」
植物の感覚や情報伝達がどのようなタンパク質の動きによって引き起こされるのかを分子レベルで理解することを目指します。特に、高速原子間力顕微鏡による一分子ナノスケール観察や、分子動力学(MD)計算といったコンピューターシミュレーションを活用して、植物の感覚機能をタンパク質の動きから解明します。
グループリーダー:柴田幹大(しばたみきひろ)
サブグループリーダー:渡邉宙志(わたなべひろし)
