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須田 啓(Hiraku Suda)個人ページ

メンバー紹介 2025.09.16
須田 啓の顔写真(仮)

名前:須田 啓 Dr. Hiraku Suda

所属・役職:埼玉大学 大学院理工学研究科 生命科学部門 分子生物学コース 細胞情報研究室(豊田研究室) 助教

役職(ERATO):研究総括補佐、光学装置開発グループリーダー

学位:博士(理学)(総合研究大学院大学、2020年取得)

専門:植物生理学、植物生体力学

出身/趣味:東京都多摩市/生物採集

研究キーワード: カルシウムシグナル バイオセンサー イメージング 接触刺激 ハエトリソウ

E:mail:suda222[at]mail.saitama-u.ac.jp(※[at]は@に変換)

最終更新日:2025-09-16

研究者を目指したきっかけ

小学生の頃、尾瀬ヶ原でモウセンゴケという動く食虫植物に出会い、脳の無い植物がどうやって虫を感知したり情報を伝えているのかに興味を持ちました。結果的に今もその答えを探して研究を続けています。

研究テーマ

食虫植物をモデルにした高速情報伝達・運動機構の解明

ハエトリソウの研究イメージ(仮)
ハエトリソウの葉

研究概要

ハエトリソウをモデルとして利用し、植物の高速な情報伝達機構および運動機構を、 顕微鏡技術電気生理技術により解明する研究を推進中です。
食虫植物のハエトリソウは、触れると1秒以内の瞬時に葉を閉じ合わせて獲物を捕らえます。この現象は、 葉の中で起こるカルシウムの濃度変化電気信号によって引き起こされます。私は、これらの信号を 生きた状態でリアルタイムに観察・可視化し植物が触れられたことをどのように感じ取りどのように情報を伝えて運動を起こしているのかという仕組みについてを分子のレベルで明らかにしようとしています。

研究の興味

食虫植物は植物であるにもかかわらず虫を捕らえて自身の栄養として、痩せた土地での生存競争に打ち勝つことが出来ます。しかし、高速で動き回る虫を捕らえるためには、動物を超える速度で獲物を知覚し、情報を伝え、動かなければなりません。とりわけハエトリソウは触れられてから、わずか1秒程度で運動して獲物を捕らえます。では、他の植物が持っていないような高速な応答機構はどのように生み出されたのでしょうか?私はこのような植物の高速な応答機構を実現する普遍的原理や進化における起源に興味をもって研究をしています。

現在の研究テーマ

① 遺伝子組み換えハエトリソウを用いた植物の高速な刺激応答機の研究

触れられたことを感知して高速で運動するには、

  1. 1. 物理的に与えられた力を細胞内のイオン濃度変化などの生物的なシグナルに変換する。
  2. 2. 触れられた領域から運動する領域にシグナルを伝える。
  3. 3. 伝達されたシグナルを元に運動を引き起こす物理的な力を生み出す。

これらの仕組みを解き明かすため、生物学的なアプローチ(ハエトリソウを遺伝子組み換えする独自技術や、 カルシウムイオン濃度と電気シグナルの同時測定技術)と、物理学的なアプローチ(運動の画像解析技術や力学シミュレーション)を組み合わせて研究をしています。

研究概要のイメージ
ハエトリソウの葉で接触刺激によりカルシウムイオンが増加している
様子(黄色の蛍光がカルシウムイオン濃度の高い部分)

② 植物の感覚を4Dイメージングの分析を可能にする光学装置開発

様々な植物はユニークな形の葉を持っていますが、例えばプレパラートなどを使って顕微鏡で植物を観察しようとすると、どうしても平面的な二次元の画像に見えてしまうと思います。これまで、植物で情報を伝える役割を担う「カルシウムイオン」を可視化する技術でも、その流れは平面的にしか観察できませんでした。私たちは様々な技術を応用し、カルシウムの情報が三次元的に伝わる様子を、「道端に生えている姿のまま」で観察する技術を開発しています。

研究概要のイメージ
植物の4Dイメージング

ひとことメッセージ

ハエトリソウのような研究材料として一般的でない生物を取り扱うことは、基盤技術の未成熟さや植物の成長速度の遅さと向き合う必要があり挑戦的な研究です。しかし、それは同時に他の植物では調べられない機構や原理にアプローチできるということでもあり、未開拓な謎を解くきっかけにもなります。

学歴

  • 2015年10月〜2020年9月総合研究大学院大学, 生命科学研究科 基礎生物学専攻, 5年一貫制博士課程 修了(博士(理学))

職歴

  • 2024年〜現在科学技術振興機構(JST) ERATO 豊田植物感覚プロジェクト, 光学装置開発グループ グループリーダー/研究総括補佐
  • 2024年〜現在埼玉大学 大学院理工学研究科 生命科学系専攻 細胞情報研究室(豊田研究室), 助教
  • 2022年〜2024年日本学術振興会, 特別研究員 PD
  • 2020年〜2022年埼玉大学 大学院理工学研究科 生命科学系専攻 細胞情報研究室(豊田研究室), 博士研究員
  • 2017年〜2019年日本学術振興会, 特別研究員 DC2

代表的な論文

  1. 1. Suda, H., Asakawa, H., Hagihara, T., Ohi, S., Segami, S., Hasebe, M., Toyota, M. (2025). MSL10 is a high-sensitivity mechanosensor in the tactile sense of the Venus flytrap. Nature Communications. in press.

  2. 2. Suda, H., Mano, H., Toyota, M., Fukushima, K., Mimura, T., Tsutsui, I., Hedrich, R., Tamada, Y., Hasebe, M. (2020). Calcium dynamics during trap closure visualized in transgenic Venus flytrap. Nature Plants, 6(10):1219–1224. DOI
  3. ▶︎日本語の解説|【プレスリリース】食虫植物ハエトリソウの記憶の仕組みを解明

  4. 3. 須田 啓(2021). 日本語総説:カルシウムイオンを介したハエトリソウの記憶機構. 植物科学最前線, 12:89–100. PDF
  5. 最新情報とその他の業績: researchmap

受賞歴

  1. 2023年 第40回 井上研究奨励賞, 公益財団法人 井上科学振興財団

所属学会

  1. 日本植物学会
  2. 日本植物生理学会

関連リンク