研究設備
これら技術やそれらの開発研究経験は、基礎研究だけでなく、微生物が関わる様々な分野での応用利用も期待されます。本プロジェクトを支える技術、各種デバイスを以下に紹介します。
微生物集団の可視化を支える技術
Continuous Optimizing Confocal Reflection Microscopy(COCRM)法

- 装置:レーザー共焦点顕微鏡を使用(反射使用にアレンジ)
- レーザーによる細胞の反射光を利用 (染色・GFPが不必要)
- 試料の非破壊
- 経時的な観察が可能 (嫌気環境でも好気環境でも)
MEMS技術を用いたマイクロデバイスの利用
活性汚泥中の複合微生物バイオフィルムを経時的にイメージングし、 同時に複合微生物バイオフィルムによるアンモニア除去能を経時的に計測することができるシステムを、マイクロTASを用いて微小環境で構築しました。これにより、数十μlという微小空間でバイオフィルムの性状と そのアンモニア除去能を同時に解析することができるようになりました。
未だ知られざる様々な微生物の性状を明らかとし、それらの応用利用を図る上で、このような技術は非常に有用なものであります。

Toda et al., Appl. Environ. Microbiol. 2011;77:4253-4255
Stickable Flow Device

ERATOでの研究をすすめる中で、様々な基質上での微生物バイオフィルム形成過程を研究するための汎用性の高いツール、Stickable Flow Deviceが生まれました。これまでの研究では、ガラス基板へのバイオフィルム形成機構に関して主に研究されてきましたが、本デバイスを利用することで、バイオフィルム形成過程を観察したい対象物の上に自由に貼り付けて利用することが可能になりました。
また、流路パターンは一般のベクター画像デザインツールでデザインし、自由に形成することができます。

Kiyokawa T, Usuba R, Obana N, Yokokawa M, Toyofuku M, Suzuki H, Nomura N.
Microbes Environ., 2017 Mar 31;32(1):88-91.
doi: 10.1264/jsme2.ME16161.
微生物集団の可視化を可能にするデバイス群
超解像顕微鏡 ELYRA 3D-PALM

光学顕微鏡(分解能250nm)をベースとしながら、超解像を実現するイメージングシステムです。 2014年にノーベル化学賞を受賞したPALM(Photo-Activated Localization Micriscopy)を採用し、最小で20nmの分解能を達成します。PALMでは蛍光分子をランダムに励起し、それぞれの分子の局在を認識することで超解像を達成します。また、本システムでは3D(X/Y/Z)でのPALMイメージングも可能としています。
LSM710 with Airyscan (LSM780)

倒立型の顕微鏡をベースとしたLSM710は、培養細胞やマルチウエルプレートでの観察を可能にする共焦点レーザスキャン顕微鏡です。32Ch高感度GaAsP検出器を採用し、微弱な蛍光を低レーザ照射で、さらに400-700nmの範囲を取得するスペクトルイメージングにより、最大10種類の蛍光色素を同時に長時間観察することが可能となります。さらに、Airyscanユニットの搭載により、共焦点で140nmの超解像を実現し、広視野においても詳細な構造を明らかにすることが可能となります。
LSM880 NLO with Airyscan

正立顕微鏡をベースとした共焦点レーザスキャン顕微鏡LSM880 NLOは、赤外フェムト秒パルスレーザを採用することで、バイオフィルムにおいても光の届きにくい深部での明瞭な立体構造観察を目指します。 また、共焦点で超解像を実現するAiryscan検出器を導入することで、深部での4次元超微細構造をより詳細に解析可能です。(上記LSM710同様32ch高感度検出器GaAsP搭載)
レーザーマイクロダイセクション PALM MicroBeam

PALM MicroBeamは1細胞レベルの微細な領域も回収できるシステムです。目的領域はコンタミネーションフリーな状態で回収ができ、回収したサンプルのダウンストリーム解析を妨げません。また、本システムは倒立顕微鏡を採用しており、通常のスライドガラス以外にディッシュなど様々な容器に対応でき、さらには微細な領域だけでなく大きな領域まで正確に抽出することができます。生細胞の場合には、回収後も細胞の活性を損なわずに純粋培養を行うことができます。
高開口電動ズーム顕微鏡Axio Zoom.V16

Axio Zoom.V16は、従来の実体顕微鏡と異なるモノズーム光学系の採用により、超大口径光路を実現。対物レンズ1xで、一般的な光学顕微鏡を凌駕するNA 0.25(対物レンズ10x相当)を達成している。中間ズーム比においても高い開口数を実現するため、広視野で極めて明るく、鮮明な画像の取得が可能。困難な微弱蛍光のスクリーニングから、高解像の多次元イメージの取得まで完璧に対応することができます。