科学オリンピックだより
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INTERVIEW
象印マホービン株式会社 商品企画部
サブマネージャー 鎌田 明博氏
飲み物の温度を保つ厚さ1mmの“宇宙空間”
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科学オリンピックだよりVol.3
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飲み物の温度を保つ厚さ1mmの“ 宇宙空間”
宇宙空間のような真空状態を人工的に作り出すことで、飲み物の温度を長時間保てる容器。それが魔法瓶です。保温・保冷の仕組みについて、象印マホービン商品企画部の鎌田明博さんにお話を伺いました。
象印マホービン株式会社
商品企画部サブマネージャー
鎌田 明博氏
「保温や保冷は、熱の伝わりをさえぎることで初めて可能になります。熱の伝わり方には、伝導・対流・放射の3つがあり、魔法瓶にはこれらすべてをさえぎる仕組みが備わっています」。伝導とは、物質と物質が接することで、温度の高いほうから低いほうへと熱が移動すること。対流とは、気体や液体の中で温度差ができたとき、熱の移動が起こること。そして放射とは、熱が電磁波として物質を介することなしに移動すること。太陽の熱が真空の宇宙を通って地球まで届くのも、放射の働きがあってこそなのです。「魔法瓶は、内瓶と外瓶の2重構造にして間に真空層を作ることで、熱の伝導・対流を防いでいます。さらに、真空層内部に金属箔を封入したり、メッキを施したりすることで電磁波としての熱を反射し、放射によって熱が逃げることも防げるのです」と鎌田さん。
ただ、魔法瓶は構造上、どうしても注ぎ口の部分で内瓶と外瓶が接するため、そこから少しずつ熱が逃げてしまいます。そのため、ふたの部分に断熱材を入れたり、空気の層を挟んだ2重構造にしたりすることで熱が逃げるのを最小限に抑えているそうです。「目指すは、真空層1mm以下!」と鎌田さんは意気込みます。真空層の幅が広くても狭くても、真空状態であれば断熱効果に差が出ることはないとのこと。しかし、幅が狭くなるほどわずかな衝撃で内瓶と外瓶が接する可能性も高くなり、そこから熱が逃げてしまいます。「薄さと軽さとコンパクトさ。そして強度の両立が魔法瓶を作るうえで変わらないテーマですね」。さらに鎌田さんは次のように続けました。「魔法瓶の真空断熱技術を応用して、壁面などに使われる平面状の真空パネルの開発・製品化に成功しました。今後はサイズと形のバリエーションを増やしてさまざまな分野で展開していく予定です。また、真空層を作る排気の工程で低温化を進め、より省エネで効率よく生産できる技術を開発していきたいと思います」
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