JST20周年記念事業・公開対談レポート

第3回JST20周年記念シンポジウム受付風景

 科学技術振興機構(JST)は2016年1月9日、「若い世代へ ノーベル賞科学者からの提言~科学技術で次の時代を切り開け~」と題したJST20周年記念の特別公開対談を、名古屋マリオットアソシアホテルで、700人を超える聴衆を集めて開催した。これは2016年10月に設立20周年を迎えるJSTの記念事業の一環として行ったもので、今回は赤﨑勇氏、山中伸弥氏、二人のノーベル賞受賞者をお招きして、次代を担う若い世代への熱い思いを語り合っていただいた。


国立研究開発法人 科学技術振興機構理事長 濵口道成
国立研究開発法人
科学技術振興機構理事長
濵口道成


科学ジャーナリスト 辻篤子氏
科学ジャーナリスト
辻篤子氏


 冒頭、主催者の開会挨拶に立った科学技術振興機構(JST)の濵口道成理事長は、会場の小学生から大学生までの若い世代に「皆さんは科学技術を信じられますか」と問いかけた。その背景には、大震災と福島原発事故以降に広がった国民の科学技術不信への懸念が潜む。それを意識した上で、「それでも日本には科学技術が必要。日本の将来は若い皆さんにかかっている」と、本シンポジウムのテーマである「若い世代」に向けた思いを語った。

 それを受けるかたちで、科学ジャーナリスト・辻篤子さんの司会により、対談が始まった。研究一筋という研究者が多いこの国にあって、両先生の経歴はやや異質である。赤﨑先生は、民間企業勤務を経験してから研究の道に入られ、山中先生は、一度は臨床医として歩みながら、難病の患者を救うために研究者への転身を図られた。そうした道筋を経て、研究者として最高の栄誉を勝ち得たお二人の興味深いお話に、若い世代ばかりでなく、一般聴衆もいつの間にか引き込まれた半日となった。

第3回JST20周年記念シンポジウム お二人の様子


京都大学iPS細胞研究所所長・教授 山中伸弥氏
京都大学iPS細胞研究所所長・教授
山中伸弥氏


名城大学終身教授/名古屋大学特別教授・名誉教授 赤﨑勇氏
名城大学終身教授/名古屋大学特別教授・名誉教授
赤﨑勇氏

 外科医時代の山中先生は、手術が得意ではなく、『”ジャマナカ”と言われた』と会場の笑いを誘いながらも、研究活動では予想と違う結果に直面したことで、そこから次の研究の糸口をつかんだことを例示、「予想を裏切る結果こそ、飛躍のチャンス」と、研究の本質を語った。

 赤﨑先生は、湯川秀樹博士が日本人として初めてノーベル賞を受賞した1949年に京都大学に入学したものの、残念ながら、湯川博士に学ぶ機会はなかったという。青色発光ダイオードの研究では、世界中でほぼ無理だと言われていた窒化ガリウムの研究を続けたことで「あきらめない研究者」と言われたエピソードを紹介した。


 また、会場の若い人たちの質問に、好きな言葉は「経験は最高の師」(赤﨑先生)、「高くジャンプしたかったら深く屈みなさい」(山中先生)と答え、“あきらめないこと”“継続”の重要性を繰り返し語って、「人と同じことをしては駄目」「透明な目で見ることが大切」を強調されたのが大変印象的だった。

 赤﨑・山中両先生に共通するのは、若い世代への大いなる期待。科学技術をよりよく活用することによって、次の時代を切り開いていってほしいという強い気持ちが、会場の聴衆に強烈な感動を与えていた。

 なお、この対談は「ニコニコ動画」でインターネット生中継され、全国で2万人以上が視聴した。


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