第3回JST20周年記念シンポジウム開催レポート パネルディスカッション
「明日への飛躍を目指して
~ベンチャー企業が日本を救う~」
- ■パネリスト:
- Beyond Next Ventures株式会社 代表取締役社長
伊藤 毅 - ぺプチドリーム株式会社 代表取締役社長
窪田 規一 - 株式会社アドインテ 代表取締役社長
十河 慎治 - 日本ベンチャー学会 事務局長
田村 真理子 - マイクロ波化学株式会社 取締役CSO
塚原 保徳 - ■モデレータ:
- 株式会社ナカニシ常勤監査役
豊玉 英樹 - (敬称略)
まず、モデレータの豊玉英樹(ナカニシ常勤監査役)氏が、「日本の明日を創る担い手は、ベンチャービジネス」と口火を切った。「これからのわが国にとってベンチャービジネスは極めて重要だが、どうして日本ではベンチャーが活発でないのか、ベンチャービジネスで利益をあげていくにはどうすればよいか、大学の学問とキャピタルをどう結びつけていけば新しい産業を起こすことができるか」と問題提起。それを受けてディスカッションが始まった。
伊藤氏は「自分たちはベンチャーキャピタルとして、資金が足りない大学の中の起業家を見つけ出して支援することで社会貢献を行うことを目指している。医療機器の分野に限って言えば、現場の先生方の意識も高く成功事例が出てきた。しっかりした起業家精神の持主を世の中に増やすことが重要だと思う」と述べた。
ペプチドリームの窪田氏は「私どもは東京大学発ベンチャーとして10年目、創業2年目から黒字で95%は個人資金のみ、抗体と低分子の良いところをとり出して抗ガン剤をつくるのが目的だが、他に追随されないような技術をもってオリジナルなビジネスモデルをつくれば、技術で勝って事業で負けることはないと思っている。買い手が欲しいものを提供でき、売り手が一社なら、その企業は強いはずだ」と強調。
アドインテの十河氏は「自分たちは京都大学と産学連携を行い、アドネットワーク事業を推進している」と述べ、日本ベンチャー学会の田村真理子氏は「学会としてベンチャービジネス・ベンチャーキャピタルの研究に力を注ぐと同時に、人材をどう育成するかに腐心している」と語った。
また、マイクロ波化学の塚原氏は「自分たちはエネルギーの効率化をめざしてプロセスを検討するベンチャーであり、化学産業・装置産業を大幅に変えるイノベーションを起こそうとしている。会社設立当初は工場を持つ意思はなかったが、プロセスを証明するための大型マイクロ波化学工場を立ち上げ、技術の事業化を実現した」と語った。
その後フリーディスカッションに移り、つぎのような点が指摘された。
・基盤ができていない、人が集まらないという声を聞くが、それを変えて行くには成功事例を作ることが先決。
・基礎研究から開発までの段階は比較的資金が集まりやすいが、最終的な事業化のところで支援がないのが問題。
・提案書の構成や書き方がまずい、それに合わせて体裁がととのっていても内容がないものはダメ。といった、開発費を獲得するまでの膨大な提出書類作りが負担。
・一回失敗すると日本では再起が極めて難しい。再起をうながすような社会システムをつくりあげたい。
・ベンチャービジネスを通して新しい文化をつくりあげる気概が必要。etc. etc…
また、「ベンチャーと大企業との関連をどう思うか」「日本型のイノベーションエコシステムはできないだろうか」など、会場からの熱心な質疑があった。
豊玉モデレータの「日本人の感性に合ったベンチャーをつくりあげるために、少しずつ皆の気持を変えて行けば、いつかは“ベンチャー企業が日本を救う”が成就するのではないか」という言葉で、パネルディスカッションを終えた。
株式会社アドインテ
代表取締役社長
十河慎治氏
ぺプチドリーム株式会社
代表取締役社長
窪田規一氏
Beyond Next Ventures株式会社
代表取締役社長
伊藤毅氏
株式会社ナカニシ
常勤監査役
豊玉英樹氏
マイクロ波化学株式会社
取締役CSO
塚原保徳氏
日本ベンチャー学会
事務局長
田村真理子氏