第1回JST20周年記念シンポジウム開催レポート パネルディスカッション
「企業と大学の壁を超える新たな挑戦」
- ■パネル討論趣旨説明:
- 早稲田大学理工学術院教授 博士キャリアセンターセンター長
朝日透 - ■パネリスト:
- 日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役執行役員
荒川朋美 - 京都大学大学院特定教授 総合生存学館「思修館」学館長
川井秀一 - 株式会社日立製作所 執行役常務CTO兼研究開発グループ長
小島啓二 - 早稲田大学 副総長 理工学術院教授 社会デザイン工房「共創館」館長
橋本周司 - 大日本印刷株式会社 専務取締役
森野鉄治 - ■モデレータ:
- 政策研究大学院大学 副学長
上山隆大 - (敬称略)
政策研究大学院大学 副学長
上山隆大氏
最初に、朝日透・早稲田大学理工学術院教授がパネル討論の趣旨を説明、モデレータの上山隆大・政策研究大学院大学副学長が、大きく変りつつある大学の現状を指摘、「京都大学、早稲田大学の事例を紹介することからスタートさせる」と述べ、ディスカッションが開始された。
まず、早稲田大学の橋本周司・副総長・社会デザイン工房「共創館」館長が、「共創館は広く社会に開かれ、大学内外の人との交流や活動を通じて学生がライフデザインやキャリアデザインを考える場」と説明、“新たな人材育成への挑戦”を語った。
続いて京都大学が新しい大学院のあり方を問う形で発足させた総合生存学館ついて、川井秀一・大学院特定教授・総合生存学館「思修館」学館長が「従来の大学院のように特定分野での専門家を育成するのではなく、多様な分野の学生を集めて文理融合の総合教育とリーダーシップ教育を行うもの」と設立の目的と活動の現状を報告した。
これに対し企業側として、まず日本アイ・ビー・エムの荒川朋美・取締役執行役員が「いまやコンピューターという言葉さえ古くなり、インフォメーション・テクノロジーが一般化しています。私たちとしてはITというテクノロジーを一般の方に通訳できる人材が欲しいと考えています」と問題提起。日立製作所の小島啓二・執行役常務CTO兼研究開発グループ長から、「当社では社会課題を、社会インフラとIT技術で解決する社会イノベーションに取り組んでいる。社会課題となると、テクノロジー、生活者の受容性など様々な関わりがあり産・官・学の協創が欠かせなくなると考えています」と続けた。
大日本印刷の森野鉄治・専務取締役は、「私の若い頃には産学連携などという言葉は禁句に近かった」と会場の笑いを誘った後、「大学としては“企業に合わせる”という意味に囚われすぎないでほしい」と社会貢献を意識しすぎる昨今の傾向を懸念。「ダイバーシティという発想が欠かせなくなった社会の中、各分野について本質を見る目を持った人材を育てるために、学生だけでなく先生たちも含めた企業との交流を盛んにすることで多様な人材を生み出してほしい」と注文した。
パネリストの意見を踏まえ、上山モデレータの軽妙かつ的確な発言と運営で、キーワードとして浮上してきた「多様性」「協創(共創)」「融合」などをテーマに具体的かつ熱心な議論が続き、その後の会場とのやりとりなど2時間にわたるディスカッションを終えた。参加者からは興味深いディスカッションだったとのコメントが多数寄せられたことを付記する。
株式会社日立製作所
執行役常務CTO兼研究開発グループ長
小島啓二氏
京都大学大学院特定教授
総合生存学館「思修館」学館長
川井秀一氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役執行役員
荒川朋美氏
大日本印刷株式会社 専務取締役
森野鉄治氏
早稲田大学 副総長 理工学術院教授
社会デザイン工房「共創館」館長
橋本周司氏