(お知らせ)
平成13年1月24日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(総務部広報担当)

心表象プロジェクトの成果について

記憶が自然に思い出されるためには何が必要か?
***対象物を見て自然に何かを思い出す時には、大脳側頭葉内を古皮質(大脳辺縁系)から新皮質に向かって記憶信号が拡がっていくことが発見された。***
[Science Vol.291, No. 5504(米国科学雑誌)への掲載]

 1月26日発行のScience誌に、大脳の記憶想起システムについて記載した上記の論文が発表される。この研究成果は、科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」、岡崎国立共同研究機構生理学研究所、および東京大学との共同研究で得られた成果である。

研究実施機関
   科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」、岡崎国立研究機構
  生理学研究所、東京大学医学部
  研究員:  吉田正俊、 納家勇治 (Equally contributed authors)
  代表研究者: 宮下保司

概 要
    記憶を想起する時にはたらくニューロンネットワークの、大脳に特有の新しい原理を発見した。
脳の情報処理の基本原理は、感覚入力を受ける感覚領野から運動出力を指令する運動領野へ向かって、隣り合う領野が次々と信号を受け渡して行く階層的情報処理システムにある、と信じられてきた(前向き情報処理)。大脳皮質においても、ほとんどの感覚情報処理過程、運動指令信号の形成過程は、この原理に従うことが知られている。しかし、感覚刺激を手がかりとして記憶を想起するときにはこの原理が成立せず、記憶を形成する役割を担っている大脳の古い部分(海馬を中心とする側頭葉の内側部分、大脳辺縁系)から逆向きに想起情報が伝播して行くことを、今回の研究により発見した。実際、手がかりとなる視覚信号自体は、大脳側頭葉の中の新皮質であるTE野から、古い皮質である傍嗅野(内側側頭葉の一部)へと前向きに伝わることを、ニューロンの反応潜時を直接計測することによってまず確かめた。次に、記憶想起信号の伝わる向きを反応潜時から計測すると、まず傍嗅野に想起対象を表す信号が現われ、その後、次第にTE野のニューロン群が想起対象をコードするようになることが判明した。この結果は、記憶想起信号が大脳側頭葉内を、感覚信号とは逆方向に伝播することを示しており、記憶想起の障害がどのようなメカニズムによって起こるかを解析する基礎を与え、治療手段の探索へと道を拓くものである。
本研究の詳細な内容についての問い合わせは、
  科学技術振興事業団 国際共同研究事業「心表象プロジェクト」
  代表研究者 宮下保司 までお願いします。
     Tel. 03-5684-3335, Fax. 03-5684-3337

This page updated on January 26, 2001

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