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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成19年度採択課題 事後評価報告書

平成21年1月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

新規蛋白質構造解析技術SAIL法の試料調製基盤育成に向けた無細胞抽出液製造技術の開発

企業名 SAILテクノロジーズ株式会社
研究者(研究機関名) 甲斐荘 正恒(首都大学東京 研究戦略センター特任教授 兼 名古屋大学大学院構造生物学センター特任教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 JST/CREST課題(H13-18年度、甲斐荘代表)により開発されたタンパク質構造決定のための新規NMR技術-SAIL法-は、細胞抽出液を用いた無細胞合成システムを用いて目的タンパク質を調製する。特にSAIL法に用いる大腸菌抽出液の品質は、1)使用抽出液1mlあたり1mg以上のタンパク質の発現効率、2)抽出液に残存した非標識アミノ酸の発現タンパク質への取り込みが 5 % 以下であることが求められている。
 本モデル化では、経済性・安定性などの観点から大腸菌の菌体抽出液をベースとし、SAIL蛋白質調製用に特化した無細胞蛋白質合成系を開発し、年間1,000件程度迄のSAIL蛋白質試料調製に対応可能な、SAIL蛋白質調製用無細胞抽出液の大量生産技術の確立、並びにNMR を利用した品質管理体制の確立を図った。
 その結果、SAIL 用大腸菌抽出液は、年間1,000件程度まで大規模化を可能にする生産体制を確立し、その量産品において要求品質基準を達成することができた。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
技術上の数値的な目標は概ね達成されている。しかし、商品としてのコンセプト、ビジネスモデルなどに関しては検討課題を残しており、モデル化目標という観点からは検討の余地が残されている。

(イ)知的財産権等の発生
ノウハウ的な技術が多く、知的財産権に関しては検討の余地が大きい。SAIL法の基本特許は既に申請されているが、この開発支援事業に基づく出願等は見られない。製法などに関して独創性などを見直し、技術開発型ベンチャー企業の武器となる点を明確にして事業の方向性を出すことを期待。

(ウ)企業化開発の可能性
製法のノウハウ的な技術を事業に結びつけるビジネスモデルが明確でない。受託分析としての可能性が評価委員会でも指摘されており、そうした意見をもとに、市場、知財、競争力などをもう一度整理して、ビジネスモデルを再構築することを期待する。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
大学や国公立研究機関などの研究市場が主体であると市場規模は小さく、産業としての期待感は薄い。今後、医薬品開発など民間企業の一般的な開発現場にも波及する技術としてビジネスモデルが構築できれば産業としての規模も期待できる可能性はある。

3)評価のまとめ

 タンパク質の構造決定に関する独創的なSAIL法を実用化するため、SAIL蛋白質調製用に特化した無細胞蛋白質合成系を開発し、SAIL蛋白質調製用無細胞抽出液の大量生産技術を確立するという点において技術的な数値目標は概ね達成されている。ビジネスモデルや知財権の確保など、今後は事業化に向けた具体的な構想の構築に期待する。


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