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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成19年度採択課題 事後評価報告書

平成21年1月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

病害感染・生育予測機能を備えた作物の栽培支援装置(クロップナビゲーション)の開発

企業名 アスザック株式会社
研究者(研究機関名) 武田 和男(長野県農事試験場 病害虫土壌肥料部 主任研究員)

1)独創モデル化の概要及び成果

 従来アメダスデータを使ったイネいもち病発生予察や出穂期予測・成熟期予測などの予測技術は広域情報(注意報・警報)として定着してきた。しかし山間地盆地の多い日本においては広域情報を補完するために、ピンポイントの予測技術が求められてきた。
 本課題では、圃場でデータ蓄積したデータを抜き取り持ち帰ってパソコンで解析するのではなく、高温高湿かつ風雨にさらされる水田等の耕作地の栽培環境データを独自センサで計測、蓄積、解析、表示し、各種警報アドバイスを発する装置として開発を行った。
 その結果、装置に搭載したBLASTAM理論(いもち病発生メカニズム)やPRINCESS理論(コシヒカリ生育モデル)の動作を検証するとともに、当初の主要目標である@ 感染予測で過敏2件以内、見過ごし1件以内 A 生育予測で±2日 の精度を確保することができた。
 今後、a)PDA端末の様な小型軽量化の方向と b)野菜、果樹の各種理論の搭載という2つの方向へ発展させる。本装置はいわば「センサを装備した農業百科事典」を目指しており、これを利用すれば初心者が簡単に農業に参入可能となり、遊休荒廃地の再利用、食糧自給率向上へ貢献できる。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
一部課題が残されたが、企業化に向けての重大な技術的障害にはならないと考えられる。
本モデル化によって確実な技術進歩が得られ、当初計画のモデル化目標は概ね達成されたと判断できる。

(イ)知的財産権等の発生
特許が1件出願された。
今後、装置関連に加えてソフト開発等に関連して特許出願の可能性がある。

(ウ)企業化開発の可能性
企業化開発の可能性が高い。今後は地域の農業団体などとの連携によってフィールドでの企業化検討を更に進めるとともに、最適なビジネスモデルを明らかにすることが重要である。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
農業支援技術として社会的意義が大きい。普及度が高まれば新規な農業支援産業の重要な要素技術として発展する可能性がある。

3)評価のまとめ

 モデル化を通じて、効率的な農業を支援し高品質で安全性の高い作物生産に寄与する技術として企業化開発の可能性を高めることができた。今後はフィールドでの使用実績を積むとともに最適ビジネスモデルを検討して、強力に企業化を推進していただきたい。


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