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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成19年度採択課題 事後評価報告書

平成21年1月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

レセプター特異的アンタゴニストTNF変異体を利用した自己免疫疾患治療薬の開発

企業名 株式会社林原生物化学研究所
研究者(研究機関名) 堤 康央(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬プロテオミクスプロジェクト プロジェクトリーダー)

1)独創モデル化の概要及び成果

 現在、関節リウマチ等の自己免疫疾患に対する治療薬として、TNF(腫瘍壊死因子)の活性を全て遮断したTNF阻害剤が用いられて効果を発揮している。しかし、TNF阻害剤は、本来TNFの持つ生体防御に係わる重要な活性、すなわち結核や癌に対する生体の抵抗性等、を低下させることが懸念される。さらには、動物細胞を用いるために製造コストが大きいことが課題となっている。本課題は、TNFの持つ病態の発症や悪化に関わる活性部位とレセプターの結合だけを「選択的に」阻害し、かつ経済的に製造可能な自己免疫疾患治療薬の創出を目指した。
 作出したレセプター特異的アンタゴニストTNF変異体については、大腸菌を用いて医薬品として低コストで製造する方法を確立した。本方法で得た標品は、ヒト細胞を用いたin vitro実験で、ヒトへの安全性が示唆された。また、関節リウマチ動物モデルにおいて、本標品は既存薬に匹敵する充分な治療効果を示した。さらに、予備的な結果ではあるものの、従来のTNF阻害剤が禁忌とされている多発性硬化症動物モデルにおいても、本標品の有効性が示唆された。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
未達成の部分もあるが概ね良く達成されている。

(イ)知的財産権等の発生
期間中の出願はないが、今後臨床応用での可能性はある。

(ウ)企業化開発の可能性
企業化に十分なデータを得るには至っていないが、その基礎になるデータは得られている。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
社会的ニーズも高く、より優れた第二世代の生物学的製剤として新しい分野の創出も期待できる。

3)評価のまとめ

 治療薬開発のための基本特許をベースに計画通りモデル化を実現しており、標品の調整法の確立と疾患動物モデルに対する効果または有効性が確認され、今後のビジネス展開が期待できる。


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