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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成19年度採択課題 事後評価報告書

平成21年1月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

濃密飛翔微粒子特性のその場(in situ)可視化計測プローブの試作

企業名 株式会社フローテック・リサーチ
研究者(研究機関名) 西野 耕一(横浜国立大学大学院工学研究院システム創生部門 教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 粉塵や液滴を含む管路の流れ、燃料や塗料のスプレー噴霧、気泡を含む流れを計測したいというニーズが産業界に多く存在しており、複数の計測原理の計測システムが普及している。従来は、これらのいかなる手法を用いても、濃密な粒子群が存在する現象下における計測は困難であった。 本装置は、この問題を解決し直径5〜400μm、速度130m/sまでの濃密飛翔粒子の計測を行うものである。
 試作プローブは、テレセントリックレンズ系と被写界限定結像方式を採用するとともに、実績がある背景照明を利用した。すなわち、テレセントリック撮像光学系がデジタルカメラに装着され、その先端にアダプタが取り付けられており、アダプタの隙間を通過する粒子にピントが合うように設計されている。さらに、閃光時間ナノ秒オーダーパルスレーザ光が背景照明としてアダプタ先端に取り付けた拡散板の後ろから照射され、高速シャッターとして機能することにより高速で飛翔する粒子の撮影と計測が可能となった。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
動的なデータが未取得(光学系の改良が必要)であり、高速粒子、濃密粒子群の画像を扱うソフトウェアもまだ作られておらず、達成度は60%程度と評価される。

(イ)知的財産権等の発生
2件出願されているが、この技術の実用化に、それほど強力とは言えないだろう。
今後も開発を続けるのであれば、何件かの周辺特許が必要になり、取得が期待できるだろう。

(ウ)企業化開発の可能性
まだデータの取得は不十分であり、レーザを使用した競合技術が製品化されている市場であることを考えると、今すぐ企業化を考えることは、容易でないと考えられる。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
装置として完成すれば、工業的に利用される分野はあると考えられるが、既に競合製品もいくつか存在するし、新事業創出はあまり期待できないだろう。

3)評価のまとめ

 飛翔粒子の計測装置としてレーザ光の散乱を利用した市販の装置に対抗して、画像を撮影して計測する方法で小型化、使いやすいシステムの開発を狙ったモデル化だが、試作の光学系にやや無理があり、十分なデータがそろっていない。簡素化した光学系と密集粒子を扱えるソフトウェアを用いて、必要なデータを取得した上で、企業化を考えることが望ましい。
 マーケットは存在するであろうが、対象によっては、プローブの汚染対策、クリーニング方法が重要になることが予想されるので、よく検討、開発しておく必要もあろう。


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