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  3. 高齢者見守りコーディネータ育成による地域見守り活動の有効化
写真:村井 祐一

村井 祐一田園調布学園大学
人間福祉学部 教授

地域見守り活動のサポートツールの開発

各地の地域見守り活動が継続して有効に機能している例はまだ少ない実態があります。活動が直面するさまざまな課題を整理・分析し、その解決を支援する取組モデルやサポートツール類を開発しました。

概要

支援を要する高齢者の日常の様子を近隣住民が見守る地域見守り活動が各地で実践されていますが、活動の広がり、参加者の見守りスキル、自治体の福祉施策との連携等が十分ではない場合が多く、地域のセーフティネットとして機能するまでには至っていません。
本プロジェクトでは、①優れた見守りスキルの可視化、②地域住民が参加・継続しやすい地域見守り活動の再設計、③見守り活動の福祉施策への組み込み、④見守り支援アプリやICTシステム開発、⑤見守り支援コーディネータの育成、の5つを柱として、自治体施策と連携して十分な有効性を発揮できる地域見守り活動の取組モデルと支援ツール類を開発しました。この取組モデルは、公助と近助の効果的な連携による安心な地域づくりへの貢献をめざすものです。

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研究開発の成果

地域見守り活動が直面するさまざまな課題を整理・分析し、その解決を支援する取組モデルや支援ツール類を用意したうえで、それらを活用した地域見守り活動の実践を3つの協力地域で進め、次の成果を得ました。
1)3地域ともに住民が主体となった地域見守り活動の形が確立・定着し、プロジェクト終了後も組織的に活動が継続することとなりました。
2)定期的な住民アンケート等を活動に取り入れたことにより、地域の見守りニーズの把握や住民からの認知度向上等が実現し、地域と緊密につながり支持される見守り活動が形成されました。
3)近隣住民による日常的な見守りの実践により、要支援高齢者と近隣住民との関係が深まり、見守りを超えた「近助コミュニティ」形成につながる可能性が示されました。
4)本研究活動で得られた知見・成果物を「ご近助ラボ」というWebサイトに集約し、社会全体で活用できるようにしました。

研究開発のアピールポイント

地域見守り活動全体をカバーする取組モデルとマニュアル整備

協力地域での実践を通じて有効性が確認できた地域見守り活動の内容を整理し、2つのマニュアルにまとめました。地域見守り活動を始める際の教科書や参考資料として、活用いただくことができます。
①見守りコーディネータマニュアル:地域見守り活動の立ち上げと運営の中心になる人(コーディネータ)向けのマニュアルです。地域見守り活動の立ち上げから定着、継続・展開に必要な一連の取組の具体的内容を理解することができます。
②はじめての見守り活動ガイド:実際の見守りのノウハウやポイントをわかりやすくまとめた、見守り活動に参加する地域住民向けの実践ガイドブックです。
※2つのマニュアルは「ご近助ラボ」よりダウンロード可能です。

効果的な地域見守り活動の構築・運営を支える多様な支援ツール類の開発

取組の各ステップでの活動を支援するさまざまなツール類を作成しました。これらも協力地域での実践で有効性を確認しています。
①ちいきのちからシート:地域の特性や課題、取組ヒント等が見える化されるアンケート形式の地域アセスメントツールです。
②見守り活動規約・規程類ひな形:見守り活動に適切なルールを導入し、活動の信頼性を高めます。
③住民アンケート、ニューズレターひな形:住民への継続的な情報発信やコミュニケーションを支援し、認知度向上やニーズ把握につなげます。
④見守り活動計画ワークショップツール:見守り活動の展開プラン検討を支援するワークショップツールです。
※各種支援ツールは「ご近助ラボ」よりダウンロード可能です。

関係者間の情報共有と連携を支援する情報基盤システムの開発

地域見守り活動の課題のひとつが、住民による見守りの結果が関係者間で共有されにくく、異変の発見が迅速な対応につながりにくいことです。そこでスマートフォンを使って簡単に見守り報告が行え、報告された見守り情報を関係者に適切に配信したりアラートを出したりできる見守り支援システム「いるかメール」を開発しました。また、見守り対象者が自ら報告を送る機能を加え、対象者と見守りを行う担当者とのつながりの強化にも有効なしくみとなりました。(注:いるかメールは、プロジェクト終了後「Lax」という新システムに作り替え社会実装します)

成果の活用場面

地域見守り活動の準備、地域のニーズ把握、各対象者に合ったプラン作成、日々の見守りの実施、活動に関する情報発信など、地域見守り活動の各フェーズで本プロジェクトの成果を活用することができます。これから活動を始める地域はもちろん、既に見守り活動を行っている地域でも、成果の一部を取り入れて、見守り活動の円滑化や効果の向上につなげることができます。
また、「見守りコーディネータマニュアル」は、コーディネータ人材を育てるための教科書としても利用できます。「ちいきのちからシート」や「はじめての見守り活動ガイド」を地域住民向けワークショップ等で利用すれば、見守りへの住民の意識・関心を高める効果が期待できます。

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成果の担い手・受益者の声

担い手
見守りをするんだ!といっても課題が山積です。それをこんなに分かりやすく整理されて、とても勉強になりました。(行政職員)
見守り活動をやりたいと考えていた自治会や民生委員が「本当にやるぞ」という気になる、重要なきっかけづくりとなりました。(地域包括支援センター職員)
受益者
セルフ報告をご近所の方に受信してもらうようにしたら、普段からそれとなく気遣っていただける、これまでよりもよい関係をご近所と作ることができました。(見守り対象者のご家族)

目指す社会の姿/今後の課題

地域見守り活動は多くの地域で取り組まれていますが、活動が継続し有効に機能している例はまだまだ少ないのが実態です。本プロジェクトの成果を広く活用していただき、見守られる人のニーズに寄り添った、効果的で地域社会としっかりつながった見守り活動づくりに貢献できればと思います。住民主体の地域見守り活動が有効に機能すれば、多くの高齢者が地域とのつながりを得て、いざという時には迅速に支援の手が差し伸べられる、安心・安全に暮らせる地域社会づくりにつながるものと考えます。

研究開発の関与者

  • 田園調布学園大学 人間福祉学部
  • 千葉工業大学 先進工学部
  • イデア・フロント株式会社
  • 川崎市麻生区
  • 城郷小机地域ケアプラザ
  • 宿根町内会
  • 三井百合丘第二地区自治会
  • 虹ヶ丘一丁目自治会

内容に関する問い合わせ先

田園調布学園大学 人間福祉学部
[連絡先] murai[at]dcu.ac.jp ※[at]は@に置き換えてください。
https://mimamori.murai-labo.com/

事業に関する問い合わせ先

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)
[連絡先] pp-info[at]jst.go.jp ※[at]は@に置き換えてください。