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領域概要

「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域では、「私的な空間・関係性」で起きる安全・安心上の問題の予防と低減に関わる研究開発を、2015(平成27)年度から2022(令和4)年度まで推進してきました。

変容する社会と「私的な空間・関係性」における問題

我が国では、外部から発見・介入しづらい「私的な空間・関係性」における問題が顕在化しています。その背景には、世帯の小規模化や少子高齢化の進展、地域社会からの個人の孤立、インターネットやソーシャルメディアの普及・拡大といった社会の構造的な変化と、それらの変化によってもたらされる「親密圏」 と「公共圏」の変容に、既存の安全機能が対応しきれなくなっていることがあります。
ドメスティックバイオレンス、児童虐待、高齢者の孤独死や家庭内事故、ネットいじめに関連した自殺といった事象は、どのようにすれば減らすことができ、社会をより安全なものにできるのでしょうか。

制度の隘路(あいろ)と横断的視点

「親密圏」については自助や自治に任せるものであるとの考えもありましたが、国民の関心や人権意識の高まりもあり、多様なレベルでの社会的な支援・介入が徐々に広がりつつあります。一方で、支援を届けようにも、法律・規制や現場における慣行などが壁となる場合もあります。
虐待など個々の事象に関する多くの成果が積み上げられてきましたが、個々の事象に共通する対処策や制度上の問題を見出すような横断的な研究開発が活発に行われていたとはいえません。しかし、行政機関・NPO・地域住民・企業など多くの関与者との密接な協力の仕組みは、広く活用すべき共通の解決策かもしれません。事象の多くは機微に触れるため個人情報の保護が求められますが、一方で、多くの関与者の間で情報を共有する仕組みが必要です。この研究開発領域では、横断的視点を重視しています。

「公」と「私」の“間”の創出

研究開発領域では、公と私を両端に置き、その間の“間(ま)”が果たす役割に注目し、“間”に「公」と「私」が協力する新たな仕組みを作ろうとしています。プライバシーに配慮しつつ適切に介入するにはどうすればよいのか、“間”にどのような機能を持たせればよいのか、それこそが研究開発課題です。
情報通信技術を活用しての生活モニタ、近隣住民によるさりげない声がけ、関係者内での情報共有など、直接的、あるいは間接的で、さまざまな“間”の仕組みが考えられます。対象とする人々の援助希求行動にも配慮が行き届いた“間”の仕組みについて研究開発が進展し、安全な暮らしの創生に寄与することを期待しています。

領域全体の取り組みイメージ

アウトプット 総合的に推進する研究開発の対象

1.社会システム・制度の創生と伝承

  • 法制度(プライバシー、個人情報情報共有等)
  • 技術の活用可能性の提案
  • 効果的な評価指導

2.配慮が行き届き適切に介入・支援をする社会技術の創出

公/私が協力する仕組み(間)

  • コミュニティにおける多くの支援機関・家族・住民等の情報共有・連携システム
  • 養育介護や教育に関わる支援の増強
  • 低減・予防という観点からの被害者支援・加害者更生

3.情報通信技術等の利活用による新たな支援機能の構築

  • ビッグデータ解析/過去事例、IoT(バイタルセンサ等を含む)等を用いた予防と異常の早期検知、記録
  • ロボット技術、その他の活用

介入・支援のための社会技術の創出する実践的な取り組み(②)に、社会システム・制度の提案(①)や技術による新たな支援機能の創出(③)に取り組むプロジェクトの成果を統合して、公/私の協力による配慮が行き届いた適切な介入・支援する仕組みのありようやそれに資する制度の提示を検討します。実態やニーズの把握に基づいた取り組みを重視します。