【開催報告】10/19セミナー「安全な暮らしをつくる個人情報の保護:高齢者の見守り」を開催しました。
10月19日に開催したセミナーには定員超の40名が参加し、講師の藤田卓仙氏(名古屋大学 寄附講座准教授)、村井祐一氏(田園調布学園大学 教授)のご講演のあと、 1時間に及ぶ質疑応答・全体討議を行いました。一人暮らしの高齢者を見守り孤独死を防ぐには、関係者の間で情報共有が必要ですが、個人情報であれば何でも「保護」すべきものだという誤解も一部で生じています。平成17年に全面施行された個人情報保護法は、個人情報の適切な保護と利活用を目的とするものです。個人情報をどのように扱うことで安全な暮らしをつくることができるでしょうか。
講演者:藤田卓仙氏 | 講演者:村井祐一氏 |
会場の様子 |
開催概要はこちら
記録はこちら
***講演・討議内容***
藤田卓仙氏は、医師免許を持つ個人情報保護法制の専門家です。開口一番、「個人情報」と「プライバシー」が混同される個人情報保護法に関する良くある誤解を紹介。個人情報保護法をわかりやすく解説しながら、さらに「個人情報保護法制2,000個問題」などの問題も紹介されました。高齢者支援に向けた課題としては、現行の個人情報保護法制では「本人」の同意をベースとしており、認知症などで同意能力が十分でない場合の仕組みが不十分であると指摘します。
村井祐一氏は、もともと電子工学がご専門でしたが社会福祉に転向し、20年にわたり地域の見守り活動推進に取り組まれています。近所のコンビニや配食サービスが一人暮らし高齢者の異常を察知し、地域包括支援センターに連絡するなど、生活に密着したサービスが孤立化予防の社会資源となる例や、実際の現場で行われている取り組みを数多く紹介されました。一方で、住民向けの個人情報取り扱い研修を行うなかで明らかになった、個人情報保護法への「過剰反応」の問題も指摘します。
質疑応答・全体討議では、「そもそも、高齢者の見守りとは何?同意取得の際に目的が示されているの?」という鋭い質問や、現場での具体的な運用でのアドバイスを求める声がきかれました。最後に司会の山田肇領域総括より、ガイドラインの整備、グッドプラクティスの例示などを地道に行う必要とともに、法律そのものを見直すことも今後の課題として挙げられました。
今回のセミナーでは、個人情報保護法の「過剰反応」の問題だけでなく、同意能力が十分でない場合やセルフネグレクトといわれるような状態のときはさらに対応が難しい問題であることが明らかになりました。
関連情報
- 「よくわかる個人情報保護のしくみ」
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/personal_pamph27_caa.pdf
「過剰反応」の例も紹介されています。 - おおた高齢者見守りネットワーク「みま~も」
http://mima-mo.net
村井先生が好事例の一つとして紹介された、東京都大田区発の地域包括ケアシステム。平成28年度「厚生労働白書」にも紹介された、取り組みのモデル的存在です。