稲谷 龍彦

PHOTO

京都大学大学院法学研究科 准教授

現在の研究は,近代刑事司法の限界をめぐる二つの問題領域についてのものである。 一つは,巨大化・グローバル化する企業犯罪への適切かつ効果的な対応のあり方についてであり,もう一つは,日々発展・浸透する人工知能の開発・使用をめぐる刑事責任のあり方についてである。 これらの問題領域においては,罪刑法定主義,国家による刑事司法の実現,国家主権の至高性,さらには自由意志を持った自律的な存在たる人間への刑罰による働きかけ,といった,近代刑事司法の基盤及びその背景をなしてきた思想そのものが揺さぶられつつある。そのため,哲学・経済学・認知科学等の様々な隣接諸科学の成果を取り込んだ学際的アプローチを通じて,近代刑事司法の基礎に遡って根本的に反省しつつ,その枠組みにとらわれない創造的解決を提言できるよう,日々研鑽を重ねている。