2018.10.31

採択にあたっての國領二郎領域総括からのコメント

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<領域総括総評> 國領 二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)

領域が2016年にスタートして3年の間に、AIを始めとする情報技術はますます進化し、産業界も本腰を入れて取り組みを開始するようになっています。世界的な気運の高まりに加えて、日本では高齢化やそれに伴う労働力不足を突破する切り札としての期待が寄せられています。

一方で、技術を活用する上での社会的な課題への対応の重要性にも理解が深まってきました。機械の下した判断に対する責任問題や、AIによる人々の行動監視の是非などについて、一貫した考え方を持った制度設計ができなければ、技術の活用を進める上でのボトルネックになってしまいます。すでに、データの活用が制限されていることで、AIの進化が妨げられているという印象を持っている技術者の方も多いのではないでしょうか。一方で、技術開発が社会的な懸念を無視して突き進むことが、技術への根拠のない反感や、それに基づく過剰な規制などを生み出すことも過去の経験から分かっています。社会に対して技術の意味を伝えていく努力と、社会から寄せられる懸念を体系的に理解し、技術や政策の設計に的確に意味のある形でフィードバックしていく継続的な仕組みが必要です。また、文化や社会体制の違いによる考え方の違いが鮮明になってきており、国際的な対話も欠かせないように思います。

高まる関心を背景に、今年のプロジェクト募集には50件もの提案をいただきました。いずれのプロジェクトも志高く、真剣に実行計画を練ってくださったもので、審査も非常に悩ましいものとなりました。ご提案いただいた全ての皆様に心からお礼を申し上げます。

採択に当たっては、これまでの領域で足りなかった、社会一般の方々とのコミュニケーションや、AIによるプロファイリングなどで従来とは異なる様相を見せ始めている、プライバシーに配慮した情報活用の取り組みを重視しました。予算の制約もあって、大変に優れたご提案をいただきながら採択できなかったものがあり、おわび申し上げます。

社会との親和性の高い技術が開発されることで、普及が進み、技術レベルがさらに高まる好循環を生み出すべく、領域として努力を続けてまいる所存です。ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。