プロジェクト概要
日常生活のデジタル化が進む一方で、デバイスやサービス利用者の死後に残ったデータをどう扱うかについては、プラットフォーム事業者によってその対応方針が異なる上、社会的な包括的指針がない状況である。また、生前の故人あるいは遺族らが、「デジタル遺品」を残すか削除するかを決める機会はあっても、それらが一致するとは限らない。さらに、遺されたデータをAIが学習し、亡くなった人を生成し、あたかも「よみがえった」かのように再現することが可能になった。こうした故人AIは、新たな追悼の機会を提供する可能性がある一方、遺族や関係者に害を及ぼしたりする可能性もあり、こうした技術やサービスが人と社会に与えるインパクトに対する共通理解は、未だ不十分な状況である。
そこで本研究開発プロジェクトでは、デジタル遺品を元にした故人AIに着目し、【自己決定】、【再現】、【無害・効用】の3つのトラストという観点から、当人を含む利害関係者の合意形成について明らかにする。例えば、故人が生前にデータの使用を許容しない決定をしたならば、その故人の正確な再現は制限されるかもしれない。このように複数トラスト間で発生し得る問題を含め、故人AIをめぐるトラスト形成のメカニズムと阻害要因に対して、実証分析、哲学・倫理学による理論的研究、また法学の観点から委託者/受託者/受益者の枠組みに依拠した分析を行う。これらの成果は事業者向けガイドラインとして取りまとめ、シンポジウムなどを通じて、サービス提供者、一般の利用者に発信、または政策提言として公開することで社会的な合意形成を試みる。
研究開発への参画・協力機関
関東学院大学、慶應義塾大学、上智大学、デジタル遺品を考える会
ハダサ・アカデミック大学、ワイカト大学
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