ローカルエコーチェンバーをステアリングするトラスト調和メカニズムの認知的検討

2023年度(令和5年度)採択 (b) 課題特定型プロジェクト

写真:森田 純哉
森田 純哉静岡大学 情報学部 教授

プロジェクト概要

現代社会におけるトラストのゆらぎは、サイバーとフィジカルの関係の中で生じる。実世界とオンラインの間で、獲得した情報にギャップが生じたとき、その情報を媒介したメディアへの過信が顕在化し、不信が生じる。この背景から、サイバーとフィジカルが密につながる地域コミュニティーに根差したソーシャルメディアが必要となる。本研究開発プロジェクトでは、そのようなソーシャルメディアを価値あるものとするために、ローカルエコーチェンバーのかじ取り(ステアリング)を解決すべき問題とする。ここで、ローカルエコーチェンバーは、フィジカルともつながる小規模なソーシャルメディア内において、一般とは異なる価値観や態度への極化が生じる現象を指している。地域に根差すソーシャルメディアは、調和された情報へのトラストを導く可能性がある一方、地域の発展を阻む局所化を導く要因も含む。よって、ローカルエコーチェンバーの発生はある程度許容されつつ、地域の実情を踏まえたかじ取りの仕組みが必須となる。
研究開発項目としては、まず「①トラスト形成のメカニズム理解、阻害要因の分析」に向け、大学や高校における情報環境を模したマイクロワールドを舞台とした行動実験およびシミレーションを行う。マイクロワールドは、現実のソーシャルメディアの構造を抽象化したゲームとして実現する。ゲームを用いた参加者実験、その結果をシミュレーションするモデルを構築することで、ローカルエコーチェンバーをメカニズム的に理解し、ステアリングに至る要因を同定する。ここで得られたモデル(メカニズム)は、静岡県浜松市に所在する大学生向けのソーシャルメディアに適用され、フィールド実験を通して「②分析結果を踏まえた対策の開発」に橋渡しされる。この検討で扱うローカルなネットワークは、匿名性の高いグローバルなネットワークに対し、その気になればユーザー同士が現実社会においてつながれる点に特徴がある。このサービスを持続可能なものとするため、技術を活用した介入、ユーザーへのリテラシー教育、経済性を考慮した制度を検討する。この検討により、「③社会実装手法と効果測定法の提案」へ結び付ける。

図:森田プロジェクトの概要

研究開発への参画・協力機関

静岡大学、常葉大学、ペンシルバニア州立大学、静岡聖光学院中学校・高等学校、静岡県立浜松湖南高等学校 など

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