2013年3月31日をもちまして、領域の活動は終了致しました。

 近年、地域がコミュニティとしての機能を失いつつあり、バーチャルなコミュニケーションがあふれています。同時にさまざまなタイプの大人に接する機会が減ったことで、子どもの対人関係能力の低下が懸念されています。地域や周りの人に助けを求められない、相手の気持ちを汲み取れないなどのことからトラブルに巻き込まれる可能性も高まります。

 そこで、子どもたちが話し合いながら防犯をテーマにした劇をつくり、発表するプログラムを開発しました。劇の練習や発表を通して、犯罪に巻き込まれにくい考え方や感覚、危機への対応などを学びながらコミュニケーション力を高める活動に取り組みました(図1)。

 プロジェクトでは別のプロジェクトの知見も参考にしながら(PJ①)、連れ去りやネットを介したトラブルなどをテーマに、演劇のシナリオ3本と身体を使ったゲームなど、合わせて5つの学習コンテンツを開発しました。ワークショップ(以下、WS)で出た子どもの意見は、劇のセリフやシナリオに活用されます。同じ学校やテーマでもクラスごとに劇の内容は違うので、発表をお互いに見ることで気づきもあります。
 お地蔵さんが登場する劇では、保護者や地域の人など、見守ってくれている人が近くにいること、見かけで人は判断できないことを学べます(図2)。 警察の防犯標語「いかのおすし」を題材にした劇では、教えられるより演劇を通じて学ぶほうが記憶に残りやすいことを確認しました。
 また公募で参加者をつのり、講師を育てる講座を開きました。受講者からとくに意識の高いメンバーを選んで研修と実践を重ねながら、講師育成のプログラムもつくりました。

 WSのコンテンツや講師育成プログラムは、大阪や京都などの小学校や地域の商店街などで実験的に行いながら開発しました。小学校では、Facebook上に写真や動画をアップしてWSの様子や内容を振り返ることができるようにしたところ、「実際に親子で話をよくした」「防犯について学べた」という意見が保護者から多く寄せられました。Facebookは学校と家庭、さらには地域をつなぐツールのひとつと考えています。

 またWS参加後の変化をアンケートで調べたところ、犯罪に巻き込まれる危険性を認識しているか、犯罪にあったときに自分の言いたいことが言えるかなどの面で、効果を確認しました。 防犯演劇WSが各地で導入されるよう、動画やチラシ、Webなどを通して、学校や警察などにPRし、今後も普及に取り組んでいきます。

代表者・グループリーダー
■平田 オリザ:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授
■蓮行:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任講師
■坂野 充:NPO法人JAE 教育クリエイター
■山口 洋典:立命館大学共通教育推進機構 准教授
■伊藤 京子:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 助教

主な実施者
■田野 邦彦:有限会社アゴラ企画 研究補助員 ■わたなべ なおこ:あなざーわーくす 研究補助員
■佐藤 誠:有限会社アゴラ企画 ■武田 信彦:うさぎママのパトロール教室 主宰
■門脇 俊輔:NPO法人フリンジシアタープロジェクト フェロー
■紙本 明子:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任研究員
■小林 健司:NPO法人JAE 教育クリエイター ■糸井 登:立命館小学校 教諭 ■長谷川 昭:立命館小学校 主幹
■吉川 裕子:立命館小学校 教諭 ■末岡 妙子:枚方市立樟葉西小学校PTA副会長 副会長
■中山 芳一:岡山県学童保育連絡協議会 副会長 / NPO法人日本放課後児童指導員協会 副会長
■渡邊 裕史:NPO法人フリンジシアタープロジェクト ワークショップデザイナー
■阪本 麻紀:NPO法人フリンジシアタープロジェクト コンテンツ監修 ■黒木 陽子:劇団衛星 WS講師(CT)
■松田 雅子:NPO法人JAE 教育クリエイター
■木ノ下 智恵子:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 特任准教授
■表 美由紀:財団法人京都ユースサービス協会 ユースワーカー
■竹川 勉:京阪電気鉄道株式会社お客さまサービス事業部企画課 課長
■森 啓子:日本財団総務 グループファンドレイジングチーム担当リーダー
■西村 和代:同志社大学ソーシャル・イノベーション研究センター

協力者
■苅宿 俊文:青山学院大学 教授 ■藤川 大祐:千葉大学 教授
■安藤 花恵:九州国際大学 准教授 ■高木 光太郎:青山学院大学 教授 ■石本 興司
■京都府警察本部防災危機管理担当 ■京都府警察本部生活安全部生活安全企画課 ■パナソニック株式会社
■京都市教育委員会 ■枚方市教育委員会 ■枚方市危機管理室 ■立命館小学校
■枚方市立樟葉西小学校 ■枚方市立香陽小学校 ■樟葉西校区コミュニティ協議会
※所属・役職は、参加終了時のもの。詳しくは研究開発実施終了報告書を参照。

【論文】

■蓮行,伊藤 京子,紙本 明子(2010)「防犯教育におけるインタフェースとしての演劇ワークショップ」,Human Interface2010,BIWAKO.

■蓮行(2011)「犯罪からの子どもの安全特集子どもの安全を守るインタフェース・演劇で防犯?!」,ヒューマンインタフェース学会誌,Vol.13,No.2 .

【メディア報道・投稿】

■2012年7月25日,防犯信州,青森県教育庁生涯学習課主催「子どもの安全・安心実践講習会」.

【受賞】

■「あんぜんパワーアップセミナー」にて、第4回キッズデザイン賞2010フューチャーアクション部門優秀賞.