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南アフリカサイエンスフォーラム(SFSA)2021にてパラレルセッションを開催

「科学と社会」推進部

https://www.jst.go.jp/sis/

国際部

https://www.jst.go.jp/inter/

2021年12月1日から12月3日にかけて、南アフリカ科学技術イノベーション省(DSI)の主催により、プレトリアにおいて第7回目となる南アフリカサイエンスフォーラム(SFSA2021)が開催されました。JSTはパラレルセッションにて2件のウェビナーを開催しました。また、科学的助言に関するセッションにJST渡辺美代子副理事が登壇しました。SFSAは、南アフリカおよびサブサハラアフリカ諸国における科学技術イノベーション(Science, Technology and Innovation:STI)の役割に関して、多様なステークホルダーが活発な議論を交わすためのプラットフォームであり、戦略的かつ国際的なSTIパートナーシップの強化を目的としています。DSIは、JSTが毎年開催するオープンフォーラムであるサイエンスアゴラのグローバルパートナーとしてJSTと連携関係にあります。

1. 社会不安の根源を問い直す(12月1日)

  • セッション名:Reconsidering the roots of social anxiety
  • 主催:JST
  • 場所:ウェビナー

本セッションは、JSTが11月に実施したサイエンスアゴラ2021にて主催者企画として開催したもので、セッションでの議論を国際的に展開することを目的としてアーカイブ動画を放映しました。セッションでは、近年日本のみならず各国共通の課題となっている社会的孤立や孤独、社会の不安をテーマに取り上げ、日本や英国、国連からの登壇者が議論を展開しました。セションの詳細内容は以下の関連リンクをご参照ください。

2. 日本とアフリカ諸国間の環境科学における共同研究の促進(12月2日)

  • セッション名:How can Japan, South Africa, and other African countries collaborate to create impactful innovations? The answer is “AJ-CORE”, our ambitious STI action framework.
  • 主催:JST
  • 場所:ウェビナー

このセッションでは、日・アフリカ多国間共同研究を支援するAJ-CORE* (Africa-Japan Collaborative Research)というプログラムを紹介し、今後の日アフリカ協力について議論を行いました。日本と南アフリカそれぞれのファンディングエージェンシーの代表者らがAJ-COREの目的と概要を説明し、その後、参加国の研究者が本プログラムで実施中のプロジェクトにおける研究内容を紹介しました。セッションの後半では、今後のアフリカ地域での科学イノベーション促進に向けて、両国のファンディングエージェンシーの代表者と研究主幹を交え、パネルディスカッションを行いました。
パネルディスカッションでは、AJ-COREという取組みが、研究者だけでなく、企業や市民を巻き込むことでSDGsの達成に貢献する仕組みであり、女性研究者や若手研究者の能力開発の良い機会であるという声が挙がりました。一方で、アフリカ地域での社会実装の見通しなど、研究成果の今後の展開について、さらなる検討の余地がある点も明らかになりました。

* AJ-CORE (Africa-Japan Collaborative Research)は、日本-南アフリカを核とする3ヶ国以上の日・アフリカ多国間共同研究プログラムです。日本側はJST、南アフリカ側はNational Research Foundation (NRF)が支援します。

3. 政府の科学諮問に対する新たな視点(12月2日)

  • セッション名:If COVID-19 is the 9/11 moment for global science advice, what needs to happen next?
  • 主催:SciCom、南アフリカ科学アカデミー(ASSAf)、政府に対する科学的助言に関する国際ネットワーク(INGSA)
  • 場所:ウェビナー
  • パネリスト:
    • ・INGSA議長、カナダ・ケベック州主席科学顧問 レミ・キリオン氏
    • ・元エストニア国会議員・議長 エネ・エルグマ氏
    • ・国際学術会議(ISC)会長、元ニュージーランド首席首相科学顧問 ピーター・グルックマン氏
    • ・南アフリカ高等教育・科学・イノベーション大臣特別顧問 デリク・スワルツ氏
    • ・JST副理事 渡辺美代子氏
  • モデレーター:
    • ・ASSAf 執行役員 ヒムラ・スーディアル氏

このセッションでは、政府の科学顧問や学術会議、資金提供機関の登壇者が様々な視点から科学的助言のあり方について議論を展開しました。エネ・エルグマ氏は、COVID-19パンデミックを振り返り、科学に対する社会の関心が一層高くなっている現在、迅速な政治の意思決定が求められること、また政治と科学が同じゴールを共有することの重要性を強調しました。ピーター・グルックマン氏は、エビデンスに基づく政策決定では政治と科学のコミュニケーションで両者が用いる言葉の違いを克服する努力が必要だったという自身の経験に触れ、互いの謙虚さと信頼を基盤とした外交スキルと、エビデンスを統合するメカニズムや適切なプロセスが求められると説明しました。JSTからは渡辺副理事が登壇し、日本における新型コロナウイルス感染状況と日本の対応を例に、科学者と科学的事実に対する市民の信頼には、教育の浸透と科学の限界を適切に情報発信する透明性が重要である点を述べました。デリク・スワルツ氏は、政策に科学的助言をどうハーネスし、学際的かつ持続的な方法で政策を形成していくか継続的に議論していくこと、またそのシステムに誠実さ(integrity)が保たれる必要性について強調しました。レミ・キリオン氏は、各登壇者の発言に賛同した上で、科学的助言メカニズムが危機時に機能するために政治と科学、科学と市民、市民と政治それぞれの間の信頼関係を平時から構築する努力や、科学教育が平等に行き渡るための民主主義が今後も引き続き重要なテーマになると説明しました。パネルディスカッションではオープンアクセスやSNSの普及に加えCOVID-19パンデミックにより今まで以上に社会の科学への関心が高まっている中、情報発信のしかたや、科学的助言システムにアフリカなど多様な地域の科学者の声を取り入れる必要性、気候変動問題などグローバル化している社会課題対応のための国際パートナーシップの重要性など、多岐にわたる議論が行われました。

関連リンク

  • 「政府の科学諮問に対する新たな視点」セッションで講演するJST渡辺副理事「政府の科学諮問に対する新たな視点」セッションで講演するJST渡辺副理事
  • 「日本とアフリカ諸国間の環境科学における共同研究の促進」セッションに参加した登壇者達「日本とアフリカ諸国間の環境科学における共同研究の促進」セッションに参加した登壇者達