脳情報の解読と制御 さきがけ 科学技術振興機構

研究領域 『脳情報の解読と制御』


本領域の戦略目標

「運 動・判断の脳内情報を利用するための革新的要素技術の創出」

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研究領域の概要


● 本研究領域は、運動・判断の脳内情報を利用するための革新的要素技術の創出を目的とし、脳科学の基礎的研究と社会に大きな貢 献をすることが期待される応用分野をつなぐ、探索的研究や革新的技術開発を対象とします。
 具体的には、ブレインマシンインタフェース(BMI)、ニューロリハビリテーション、ニューロマーケティング、ニューロエコノ ミクス、ニューロゲノミクス、ニューロエシックスなどの応用分野に資する研究と一体的に、脳の活動から情報を読み出し、操作する ための脳情報解読制御技術等の基礎的な研究を進めていくことが期待されます。
 このような観点から、本領域では、脳科学とその応用分野の広がりに対応して、計算・実験神経科学、工学、臨床医学、基礎生物 学、経済学を含む社会科学、心理学を含む人文科学、情報学など多方面の研究者を対象とし人材を育成するとともに、次世代の研究の 基礎を築きます。

募集・選考・研究領域運営にあたっての方針


● 社会を構成する私達人間の運動、認知、意志決定、社会行動、消費行動など、ありとあらゆる日常活動は、こころの器官である脳 の機能に大きく依存しています。この事実と、非侵襲脳活動計測手法、分子生物学的手法の導入や計算理論の進歩などが相まって、脳 科学はいまや臨床医学だけではなく、経済学、倫理学、法学、マーケティングなどの様々な人文・社会科学とも協力して、社会生活の 様々な側面を豊かにする応用分野を築きつつあります。
 また、このような新しい応用は基礎神経科学が革命的に進歩するきっかけも提供します。例えば、経済学と神経科学が融合した新分 野『ニューロエコノミクス』の勃興は、従来の経済学に、非合理的な行動を行うこともある個人の、脳科学に基づく定量的モデルを導 入するという革新的な役割を果たす一方で、神経科学の分野では困難な研究対象であったヒトの社会的・経済的活動における脳内情報 処理の定量的モデル構築の流れを創り出しています。また、BMIの手法をシステム神経科学に導入し、脳内情報を解読し、直接制御 することで、情報処理の因果関係をより科学的、客観的に証明できる可能性もあります。
 従って神経科学の基礎的研究の進歩と、BMI、ニューロリハビリテーション、ニューロマーケティング、ニューロエコノミクス、 ニューロゲノミクス、ニューロエシックスなどの応用分野の発展は、決して基礎から応用に一方向的に情報や技術が流れるというもの ではなく、両者が緊密な共同作業を行うことで互いに革命的な進歩を促し、基礎研究はより深く厳密に、また応用研究は社会により広 く、またより大きな貢献をすることが期待されます。物理学や化学とその応用諸分野の間に長年にわたって築かれた、相互にとって有 益で不可欠な関係を、脳・神経科学とその新しい応用分野の間にも築くことが望まれます。

● 脳神経科学の基礎的研究と応用が互恵的に進展するためには、新進気鋭の研究者が両者を良く理解し、創造的な成果を上げる ことのできる研究環境を提供しなくてはなりません。本研究領域では、第1に計算・実験神経科学、工学、臨床医学、生物学、人 文・社会科学、情報学など多方面の学問領域、第2に基礎的研究と実用的技術開発、また第にBMI、ニューロリハビリテーショ ン、ニューロマーケティング、ニューロエコノミクス、ニューロゲノミクス、ニューロエシックスなどの応用分野の3つの軸(学 問領域、基礎と実用、応用分野)に関して、できるだけ軸のどちらかに偏らずに、学問分野、基礎か実用、応用目的について異な る背景と価値観を持つ研究者を広く募集し、その間に知的で実りの多い交流を促すことによって、神経科学とその応用分野の良好 な共進化の礎を築くことを目指します。
 平成20年度新規事業「脳科学研究戦略推進プログラム」の「脳に学ぶ」領域では研究拠点を整備し戦略的に研究開発を推進さ せ、社会ニーズへの還元を加速させることを目的としています。これに比べますと、本研究領域では、革新的で探索的な個人研究 を対象とし、基礎的研究の対象と応用分野もより広く設定する点に違いがあります。本研究領域で得られた成果や技術を「脳科学 研究戦略推進プログラム」の社会還元に応用する共同研究や共同作業は強く推奨します。一方、同一の研究者が含まれる研究チー ムが、関連する研究課題で脳科学研究戦略推進プログラムと本研究領域の両者に応募することは、無駄な重複を避けるために推奨 されません。

● 対象となる応用分野の研究課題としては、上記研究目標に沿うものであれば、特に限定するものではありません。また、脳科 学の応用分野の方法論はまだ確立されたものがあるわけではなく、さらにこの分野の発展には人材育成が重要であることから、若 手の研究者から基礎と応用、実験科学と理論科学との融合をはかった研究課題や、新しい対象や斬新で独創的な方法論をもとにし た研究課題が提案されることを期待しています。研究期間については、3年間と5年間のいずれかですが、5年間のタイプについ ては3年目の中間評価等の結果によっては研究課題を中止する場合があります。

● 募集に当たっては、脳科学の新しい応用分野の基礎となる探索的研究についても、応用事例に直結した革新的要素技術開発に ついても、質が高く探索的・独創的な研究を対象とします。課題選考に当たっては、前者については科学的水準を評価し、後者に ついては実用化の具体性を評価します。
 特に平成21年度は、下條先生と笹井先生という新しいアドバイザーに参加していただいたこともあり、認知科学を含む 人文社会科学の提案、また分子レベルの提案、さらに単純なモデル生物を対象とした提案、リアルタイムの神経活動のフィー ドバックを含むような提案を積極的に採択したいと考えます。

研究総括 川人 光男