資料5

選考総評

ERATOパネルオフィサー

今井 浩

内海 英雄

知京 豊裕

徳田 英幸

中野 義昭

福田 裕穂

八島 栄次

米田 悦啓

(五十音順)

ERATOは、規模の大きな研究費をもとに既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。

これまで科学技術は人類の繁栄と生活の質の向上に大きな貢献をしてきました。その中でも日本は先進的な役割を担ってきましたが、近年、諸外国における研究開発の加速など日本の科学技術を取り巻く環境は大きく急速に変化しており、また、持続可能な人類社会の発展などに科学技術には依然として大きな期待が寄せられています。日本が新しいサイエンスを拓き、科学技術で世界を先導して人類の発展に貢献し続けるには「世界を一変させるような一点突破型の才能のある人材を発掘し、その人が科学技術上の大きなインパクトを生み出すことに賭ける」という考えに行き着きます。また、その才能ある人材が世界トップレベルの研究を行える可能性、かつ、その重要性や世界の動向などにも鑑みた最適なタイミングを捉える必要があると考えられます。まさにこれらの考えこそが、ERATOが制度として重視している理念の1つです。これまでのERATOプロジェクトの中には、新進気鋭の若手研究者人材をリーダーに抜てきするケースも多々ありましたが、それはすなわち、ボトムアップ型では必ずしも浮かび上がってこないような次代のリーダー候補をJSTがトップダウンにより発掘し、その方々にアイデア(研究構想)で競っていただき、リーダーとしてのポテンシャルと研究プロジェクトとしてのタイミングを見極めるという、現在のスタイルにつながっています。

こうした理念の下で実施した選考プロセスの詳細は、資料4「ERATO選考プロセス」にも示していますが、候補者母集団から絞り込んだ研究者を対象に、予備提案(Pre-proposal)の書類選考、全体提案(Full-proposal)の書類選考、および面接選考という3段階の評価からなり、今年度の選考より新たに予備提案を評価するという方法を採用しました。なおこの3段階からなる評価において、多岐にわたる分野の研究構想をカバーする必要があることなども加味して、私たちパネルオフィサー以外に、パネルメンバーの先生方にも加わっていただき、単一の選考パネルを構成しました(評価者の構成は、資料2「選考パネル(評価者)」を参照)。

さてこの選考パネルでは、資料3「選考の観点」に基づいた評価を進めたわけですが、これ以外にも、パネルオフィサー連名での「ERATO選考における方針」を構想提案者に提示するとともに、各提案者個別に、パネルオフィサーからの所見、および構想提案を作成いただく際の留意点や要望を提示し、これを十分に踏まえた上で構想提案を行っていただきました。また選考会などの議論の場においては、構想提案における長所および短所双方を評価者間で述べ合うことで、一方向の議論に陥ったり、あるいは特定の評価者の意見に引きずられたりしないように努めました。

以上のような選考パネルによる予備提案書類選考、全体提案書類選考、面接選考を経て、最終的に3件の研究領域を採択するに至りました。各々の詳細は、資料1「研究総括および研究領域」に選定理由とともに記載していますが、いずれも「世界を一変させるような一点突破型の才能のある人材を発掘し、その人が科学技術上の大きなインパクトを生み出すことに賭ける」という考えに合致し、かつ「研究プロジェクトを発足させることが時宜にかなったものである」と評価されました。

いずれの研究領域においても、ERATOとしてふさわしい成果が創出されるよう、今後もわれわれパネルオフィサーも含めた専門家による進捗状況の把握や必要に応じたアドバイスなどを行っていく所存です。

なお、今回採択できなかった提案の中にも、将来大きく発展し得る優れたものが数多くありました。今回採択できなかった構想提案については、いずれも選考パネルによるコメントを付与してフィードバックを行いましたので、来年度以降にERATOもしくは他制度による研究予算獲得に向けて尽力されるよう期待します。

以上

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