黒糖焼酎の製造過程で黒糖焼酎粕が年間9,200トン発生しており、黒糖焼酎粕の9割が主にサトウキビ畑に散布されている。しかし、島内土壌ではカリウムがサトウキビ栽培に過剰供給され、茎の蔗糖合成能力を著しく低下させる障害が発生しており、サトウキビ産出額約110億円(全体の35%)を揺るがしかねない。サトウキビの収穫、搾汁後に生じるバガス、ハカマ及び脱水ケーキの有効利用法は十分に検討されておらず、果樹剪定枝、林地残林等の未利用木質バイオマス利用率向上が課題(現状利用率0%)となっており、島嶼地域に適した包括的な農産物の循環システム構築が必要である。
地域副産物から奄美群島の亜熱帯の気候に適したアラゲキクラゲ栽培用の培地を創製し、黒糖焼酎粕の農地還元による土壌の高カリウム化の抑制を図り、地域経済を活性化させる奄美群島における「きのこ生産を核とした地域バイオマスのカスケード利用」を試みている。本菌床は木本系バイオマスよりも長期にわたり安定して子実体を収穫することが可能だが、当初バガスの吸水性が悪く、かさ密度が小さいため培地体積が嵩み、従来の培地詰め機での充填が不可能であった。培地調製時に乾き蒸気を注入することで発酵バガスの物性を変化させ、従来の自動袋詰め装置での培地充填が可能となり、また培地袋詰め量を20~25%増加させることにより収量も20%増加した。栽培したアラゲキクラゲの試作品開発に成功し、一部販売も行っている。今後、廃培地を飼料化することで食品廃棄物の島内循環を可能とする。
島内循環システムを構築し、実用化するための課題として、アラゲキクラゲ栽培後に発生する廃培地の利用が挙げられる。現状、食品廃棄物を用いることでアラゲキクラゲの栽培・一部事業化には成功しているが、大量に発生する廃培地を利活用する基盤が出来ておらず、その廃棄物処理費が上乗せされていることが現状である。また、発酵バガスを用いたアラゲキクラゲの栽培だけでなく、その他島内の食品廃棄物の利用(特に果樹剪定枝の利用率は0%)についてはまだ検討できていない。加えて、栽培したアラゲキクラゲを効率良く市場に出すための基盤が無いことが課題として挙げられる。量産化を図る場合に、新規事業を行うリスクを踏まえて実施可能な企業の母体が必要である。
きのこ栽培では、特に冬場の培養・栽培温度の管理に電気代がかかることが課題として挙げられ、本課題については夏場はキクラゲ栽培、気温の低下する冬場はシイタケを栽培することで解決可能と考えている。
機関名:独立行政法人国立高等専門学校機構 鹿児島工業高等専門学校
部署名:都市環境デザイン工学科
研究責任者:教授 山内 正仁
事業名:マッチングプランナープログラム第1回探索試験
研究課題名:蒸気注入型撹拌装置を用いた発酵バガス・黒糖焼酎粕培地の量産化に関する研究
支援期間:平成27年10月~平成29年3月
独立行政法人国立高等専門学校機構 鹿児島工業高等専門学校
鹿児島工業高等専門学校 都市環境デザイン工学科 山内 正仁