(国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)で新たに作出された「くも糸シルク」繭は、従来シルクと同様の光沢や柔らかさを持ちながら、強くて伸びが良く切れにくい特徴を持ち注目を集めている。国産の繭であるくも糸シルク繭の新規性や機能性を活かすことで、ユネスコ無形文化遺産「結城紬」の新商品開発が期待できることから、結城紬へのくも糸シルクの適用可能性を検討した。
くも糸シルクで結城紬を試作し、目付、厚さ、保温性、通気性、風合い物性、強伸度、摩耗強度のデータを取得し、従来品と比較することで新規材料を使用した結城紬が持つ特性について調べた。また、結城紬として適用できるかどうか農研機構の技術を参考に新たな知見を見出し、各製作工程における作業状況についても作業者から意見を徴しその特性を見出すヒントを得た。
【従来の工程との作業性の違い】
煮繭 :通常の方法により作製可能
真綿掛け :多少かけづらいが、通常通り繭5、6個で真綿作成が可能
手紬糸作製 :わたの引きが弱く、細い糸がとりにくい
地機織り :糸切れがほとんどなく、短時間で製織可能
本研究成果を元に農研機構・奥順株式会社と共に蛍光シルクを用いた「いしげ結城紬」について現在試作開発を進め、特性および工業化のための研究も推進している。
*原料に使用されている蛍光タンパク質mAGは、国立研究開発法人理化学研究所及び株式会社医学生物学研究所により開発されました。
機関名:茨城県産業技術イノベーションセンター繊維高分子研究所
部署名:紬技術部門
研究責任者:主任研究員 本庄 恵美
事業名:マッチングプランナープログラム企業ニーズ解決試験
研究課題名:結城紬の着衣安定性に関する研究
支援期間:平成28年6月~平成29年3月
茨城県産業技術イノベーションセンター繊維高分子研究所
紬技術部門 主任研究員 本庄 恵美 TEL:0296-33-4154