[本文]

JST トップ > A-STEP機能検証フェーズ トップ > 研究開発成果 > インフラサウンド津波センサーの高度化および防災システムへの応用展開に関する研究
line

インフラサウンド津波センサーの高度化および防災システムへの応用展開に関する研究

印刷はこちら(PDFファイル)
seika12

インフラサウンド(超低周波音、微気圧波)とは

 インフラサウンド(超低周波音)は、落雷、火山噴火、津波などの地球物理学的規模の現象等により発生する微小気圧変動として大気中を音速で伝搬し、大規模な現象の際のインフラサウンドは、1,000 kmを越える遠方まで伝搬することがあります。海溝型巨大地震の際、沿岸地域の陸上に面的に設置されたインフラサウンドセンサー群により超低周波音を面的にセンシングできれば、津波は音波より遅れて到来するため、津波到来前にその規模情報を把握でき、地域防災に役立つことが期待されます。洋上ブイ型GPS波浪計(津波計)や海底水圧・地震計に比べ、陸上設置型のインフラサウンドセンサーは取り扱いが容易で、海岸線に沿った多地点面的配置により統計的確実性や有用性が飛躍的に高まると期待されます。さらに潮位計や非常時通信機能等を組み合わせ、IoTアプリケーションとして安全安心な社会に向けた重要なコンテンツの1つを提供することが可能となります。

製品化と高知県内をモデル地域とした実証試験

 東日本震災前の2006年より基礎研究に着手、その成果を踏まえ株式会社サヤと共同で研究開発し、2015年2月、センサー単体としての製品化が完了しました。2015年2月に㈱レソナアレスを設立し、複合型インフラサウンドセンサーADXII-INF01を発売しています。同センサーを量産し、2016年8月に高知県黒潮町に5台、2017年11月には高知県全域に増設し、現在は県内15台体制での面的観測による実証試験を実施中です。地元自治体や地域住民の方の協力を得て「住民参加型」の津波情報検知網の構築を進めており、三重県、千葉県、北海道にも展開中です。

 本システムの実用化に向けて、インフラサウンドの面的計測から特性波長を検出することにより津波波源域での海水面の隆起領域面積を割り出す部分の技術確立が必要です。さらに各地点で計測される過剰圧の値から海水面の隆起高を算出する部分の研究、大気中の音波伝搬過程に関する理学的見地からの研究などを進めています。

 これにより実測から「津波マグニチュード」を推算する手法を確立し、既存の津波シミュレーションにインプットすることで、津波警報の高精度化に繋げることを目指しています。

今後の展開

 広域に面的配置されたセンサー群は、大規模災害という非常時に機能しなければ意味が無く、その際には通信回線や電源等のインフラが全喪失する事態も考慮しなければなりません。通常時はLTE携帯回線等を介し情報収集し、非常時には独自の低電力長距離無線規格にて最優先情報のみ収集する冗長性の確保を目的に、高知県内モデル地域をフィールドとした実践的研究開発を2017年度後半から進めています。
 近年のスマートホン搭載センサー等の急激な技術発展と小型化により、既存技術の組合せで様々な建築物にセンサーを付加しクラウド・センシングすれば、全国10万箇所程度のセンシング網も夢ではありません。地域の異常事象をAIにより察知し、いち早く防災・減災に取り組める未来が訪れようとしています。高精度なセンサー群を全国1000地点規模で構築した上で、一般家屋、学校、道路、橋、コンビニエンスストア等に低コストのセンサー群を設置・補間すれば、稠密な震度分布や災害に直結する異常現象のきめ細かい察知が期待できます。

【当該研究テーマに関連するJST以外からの競争的資金等】
・セコム科学技術振興財団 研究助成,国産インフラサウンド複合型センサーの面的展開による津波防災情報伝達ネットワークの構築,平成28~31年 度(山本 他,平成30年度分までの総額61,050千円,年度毎更新審査有のため平成31年度分は未確定)
・文部科学省,科学研究費補助金・基盤研究(B),陸上からの超低周波音観測に基づく津波規模予測システムの開発とモデル地域での検証,平成29 ~31年度(山本 他,平成30年度分までの総額11,700千円)
・総務省,戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) 電波有効利用促進型研究開発,津波防災情報伝達を目的とした超低周波音および潮 位の多地点連続計測網と低電力長距離無線通信を基盤とするロバストな非常時IoT通信システムの研究開発,平成29~30年度(山本 他)

研究開発機関情報

機関名:高知県公立大学法人 高知工科大学

部署名:総合研究所 インフラサウンド研究室

研究責任者:教授 山本 真行

支援プログラム

事業名:マッチングプランナープログラム第1回探索試験 

研究課題名:インフラサウンド津波センサーの高度化および防災システムへの応用展開に関する研究

支援期間:平成27年10月~平成28年9月

研究開発に関するお問い合わせ

高知県公立大学法人 高知工科大学 研究連携部

〒782-8502 高知県香美市土佐山田町宮ノ口185

E-mail:rc[at]ml.kochi-tech.ac.jp Tel:0887-57-2025

ページの先頭に戻る