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超親水・超撥水性材料の定量的濡れ性評価

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研究開発概要

物質表面の液体とのなじみやすさを濡れ性といい、近年、水に対して極めてなじみやすい超親水性材料や水をよく弾く超撥水性材料といった新素材が開発され、曇り止めや傘など身近な製品に使われるようになってきている。しかしこれらの材料がどれほどの濡れ性であるかを数値化するためには、従来接触角を測定し利用しているが、超撥水・超親水素材では角度計測の分解能が低下するため接触角を細かく計測することは難しく、技術的な難しさがある。本研究では、調べたい超親水・超撥水性材料を液体で覆い、そこへ気体を吹き付けて液体を弾くことで、液体の弾かれ方から濡れ性を評価する方法を開発した。評価対象物を容器底面に設置、液体で覆い、上部に設置したノズルから気体噴流を噴射し、発生した液体除去領域の直径を計測することで濡れ性を評価する。

成果

一般的な濡れ性評価指標である接触角が約10°を切るものを超親水性、概ね150°を超えるようなものを超撥水性があるという。超撥水性材料の領域にあたる150~165°の範囲において、本技術の空気噴流による液体除去に基づく濡れ性評価法の濡れ性指標である液体除去直径と、従来法の濡れ性評価指標の接触角との間に高い線形性があることが確認できた。このことから、本技術の液体除去直径は、従来法である接触角と一定程度類似性を有する濡れ性の指標といえ、特殊な器具が不要であることも含め、従来法に比べ、より簡便に濡れ性の比較が可能な比較水準となり得ることを示した。
また事前に水に浸漬した超親水性材料では、従来法では接触角計測が全く実施できず、本技術方法でのみ、液体除去直径および液体回復時間を濡れ性指標として定量化することができた。このことから接触角法での評価が難しいような超親水性材料において、液体除去による濡れ性評価法を用いることによって新たに定量的濡れ性評価が可能となることを示した。

今後の展開

当該手法の応用分野として、これまでに培養細胞などのバイオ分野を中心に展開してきたが、本成果により超親水性・超撥水性材料における応用可能性が示された。このことから、超親水から超撥水まで幅広い材料の濡れ性評価に展開できるものと考えられる。特に従来法では測定困難な濡れ性領域においても当該手法が有効な場面があることから、新素材開発や機能性材料開発など工業分野における品質評価や機能性評価への展開が期待できる。
一般的に濡れ性評価は、物質間相互作用評価、付着性評価、防曇性評価、表面処理の品質評価などの機能性評価を目的として、素材から最終製品まで幅広く実施されており、素材としてはガラス、金属、セラミックス、繊維、樹脂、食材、塗料など、分野としては電気、機械、印刷、食品、日用品、医療機器など多岐にわたる適用がある。本研究開発において、当該手法は従来の接触角と比べて、簡便性に優れ評価可能範囲が広いことが示されており、濡れ性評価法の導入ハードルの低減、効率的な評価によるコスト低減、あらたな応用分野の開拓といった産業の全分野への経済的・社会的な波及効果が期待できる。

研究開発機関情報

機関名:国立研究開発法人 理化学研究所

部署名:生命機能科学研究センター 集積バイオデバイス研究チーム

研究責任者:研究員 田中 信行

支援プログラム

事業名:地域産学バリュープログラム 

研究課題名:超親水・超撥水性材料の定量的濡れ性評価

支援期間:平成29年10月~平成30年9月

研究開発に関するお問い合わせ

国立研究開発法人 理化学研究所

生命機能科学研究センター 集積バイオデバイス研究チーム

(担当:田中 信行) TEL:06-6105-5132 Website: http://ibd.riken.jp/

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