概要
新たな目標検討のためのビジョン策定(ミレニア・プログラム)について
わが国は新型コロナウイルス感染症の影響により、今後の社会が急速かつ著しく変容していくことが想定されます。ポストコロナ/アフターコロナ時代における社会像を明確化し、目まぐるしく変化する経済社会情勢に対応すべく、新たなムーンショット目標を検討することとなりました。JSTは、新たなムーンショット目標のアイデアを持ち、そのアイデアを具体化・精緻化するための調査研究を行う、目標検討チームを公募し、21チームを採択しました。
採択された目標検討チームは、約6か月をかけて、将来の社会経済の課題やあるべき姿(ビジョン)について、さらに議論・調査を深め、目標の達成により実現したい2050年の社会像、目標達成に向けて取り組むべき課題、2050年の社会像からバックキャストした2030年の具体的な達成目標、目標達成に至るシナリオ、検証可能な目標達成基準などを明らかにした報告書を作成します。JSTでは、調査研究の結果を評価した上で、目標検討チームのアイデアのうち、数件をムーンショット目標候補とします。その後、目標候補の内容を踏まえて、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が最終的なムーンショット目標を決定します。
ビジョナリーリーダー
本プログラムを統括するビジョナリーリーダーは下記のとおりです。
- 総 括:
- 渡辺 捷昭(前 トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長)
- 副総括:
- 足立 正之(株式会社堀場製作所 代表取締役社長)
天野 浩 (名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授)
久能 祐子 (S&R財団理事長(米国)、Halcyon共同創設者兼理事(米国)、京都大学理事(非常勤))
ミレニア・プログラム終了後の目標決定プロセスについて
本プログラムでは、2021年1月に採択した21の目標検討チームが、2021年7月までの6か月間、ビジョナリーリーダーの指導・助言の下で、実現したい2050年の社会像や目標の明確化、目標達成に向け取り組むべき課題とシナリオ(2030年の達成目標等を含む)、検証可能な目標達成基準等を、調査研究報告書に取りまとめました。
この報告書を受け、各報告書の関連研究分野における外部専門家(参考1)の協力を得て、ビジョナリーリーダーが一次評価を実施しました。評価は、「ムーンショット目標の要素である”Inspiring””Imaginative””Credible”のすべてについて、精緻に検討された目標案となっているか」という観点に基づき行いました。その結果、新たなムーンショット目標に繋がる可能性がある8チームが選定されましたが、いずれの調査研究報告書も、新目標候補とするためには改善が必要であると判断されました。
その後、当該8チームによる再検討(社会ビジョンやその実現に向けた研究開発シナリオの整理等)や統合を経て策定された5つの目標候補案(参考2)について、ビジョナリーリーダーが最終評価を行った結果、「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現」「2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現」の2件を優先して、JSTが総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)有識者議員懇談会(9月16日)に提示しました。その後、CSTIによる審議を経て、9月28日に開催されたCSTI本会議において、この2件が新たなムーンショット目標として正式に決定されました。
今後、それぞれのムーンショット目標の達成に向けて挑戦的な研究開発を推進すべき分野・領域等を定めた研究開発構想が文部科学省により策定された後、JSTは、ムーンショット目標に関する研究開発全体の責任者であるプログラムディレクター(PD)を任命し、そのもとで研究開発プロジェクトを推進するプロジェクトマネージャー(PM)を公募する予定です。
目標名 | ミレニア・プログラムにおいて 当該目標の設定に貢献したチーム |
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2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現 |
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2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現 |
協力:秋山 肇(「チーム ポスト・アントロポセン」 チームリーダー、筑波大学 人文社会系 助教) |

(補足)ムーンショット目標の要素
Inspiring
- 目的や緊要性が明確に理解されるもの
- 困難だが、実現すれば将来の産業・社会に大きなインパクトが期待されるもの
- 多くの国民や海外と価値観を共有できるものであること
- 我が国の国益や産業競争力の確保に向け、科学者の英知を結集して行うことができるもの
Imaginative
- 未来の社会システムの変革をも目指すものであること
- 多くの国民が、テクノロジーが切り拓く未来の可能性を明確にイメージできるもの
Credible
- 野心的であるが、科学的に実現可能性を語り得るもの(実現可能性のある技術的なアイデアが複数存在すること)
- 達成状況が検証可能なものであること
- 既存の関連する戦略や施策の方向性と整合的であり、それらの成果も統合的に活用できること