成果概要
AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発[3] こころの好不調検知技術の確立
2023年度までの進捗状況
1. 概要
研究開発項目「AIoTによるヒト感情状態空間の構築」および「普遍的感情状態空間の構築」での成果等を踏まえ、感情状態の遷移動特性(遷移行列や遷移頻度、滞在時間・初通過時間などの確率論的性質)の解析に基づき、こころの好不調を検知・把握する技術を開発します(図1)。

2. これまでの主な成果
本年度は、研究開発項目「普遍的感情状態空間の構築」で取得されつつある社会的敗北ストレス(Social Defeat Stress:SDS)マウスモデルのデータ数例を用いて予備的解析を行い、発症前後および遷移状態での生体信号ゆらぎの特徴変化を検討しました。同定された特徴量は好不調検知の指標として、今後検討を加えていきます。
一方、好不調の制御として、研究開発項目「AIoTによるヒト感情状態空間の構築」で開発を進めているクラウドシステムを用いて毎日の睡眠モニタリング・評価を行い、睡眠に不安定性を有する群と安定な群に対してランダムに睡眠衛生改善のプッシュ通知を送る介入を実施した研究データの解析を行いました(図2)。この研究は、micro-randomizationを用いたJust-In-Time Adaptive Interventionとして位置づけられる介入研究です。結果として、前日の睡眠に関するフィードバックは、睡眠時間の延長と起床時の気分および睡眠感の有意な改善を引き起こしました。また、このような効果は、不安定群のみに有効でした。

3. 今後の展開
- 健常・疾患患者、疾患モデルマウスの感情状態の遷移動特性を解析し、こころの好不調を検知・把握する技術を開発します。
(中村 亨: 大阪大学、山本 義春: 東京大学)