成果概要

AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発[3] こころの好不調検知技術の確立

2024年度までの進捗状況

1. 概要

研究開発項目「AIoTによるヒト感情状態空間の構築」および「普遍的感情状態空間の構築」での成果等を踏まえ、感情状態の遷移動特性(遷移行列や遷移頻度、滞在時間・初通過時間などの確率論的性質)の解析に基づき、こころの好不調を検知・把握する技術を開発します(図1)。

図1
図1

2. これまでの主な成果

[2023年度までの主な成果]

好不調の制御として、研究開発項目「AIoTによるヒト感情状態空間の構築」で開発を進めているクラウドシステムを用いて毎日の睡眠モニタリング・評価を行い、睡眠に不安定性を有する群と安定な群に対してランダムに睡眠衛生改善のプッシュ通知を送る介入を実施した研究データの解析を行いました(図2)。この研究は、micro-randomizationを用いたJust-In-Time Adaptive Interventionとして位置づけられる介入研究です。結果として、前日の睡眠に関するフィードバックは、睡眠時間の延長と起床時の気分および睡眠感の有意な改善を引き起こしました。また、このような効果は、不安定群のみに有効でした。

図2
図2
[2024年度の主な成果]

日常的なプレゼンティーズムと心身状態の関連要因を明らかにし、その成果を学術論文として報告しました(図2)。この知見は、労働生産性の向上を目指した具体的な介入対象の特定に役立つものです。また、IoTクラウドシステムを用いて勤労者の睡眠脆弱性を検知する技術を開発し、モバイル技術を活用した個人適合型の介入を実施した結果、睡眠状態の改善を世界で初めて実証しました(図3)。この結果も論文としてまとめています。さらに、約2か月間のフィールド調査を実施し、就労者158名から計約34,800件(約8,400日分)の問診およびウェアラブル計測データを取得・解析し、不調状態への遷移を予測可能な指標を特定しました。

図3
図3

3. 今後の展開

健常者および疾患患者、さらに疾患モデルマウスを対象として感情状態の遷移に関する動的特性を解析し、こころの好不調を早期に検知・把握するための技術の確立を目指します。

(中村 亨: 大阪大学、山本 義春: 東京大学)