成果概要

AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発[2] 普遍的感情状態空間の構築

2023年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。疾患モデルマウス(不安や恐怖行動が増大する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測し、ヒト計測データとの併用により、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。本項目は、下記の2つの研究項目からなります。

①普遍的感情状態推定技術の開発
概要:動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。下記の研究項目で取得する動物でのIoT計測データとヒトでのIoT計測データとを併用することにより、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。
②動物を対象とした生体信号・感情状態計測
概要:普遍的感情推定技術の開発に不可欠な動物IoT計測データを取得します。疾患モデルマウス(不安・恐怖行動が増加する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測します。

2. これまでの主な成果

動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目的に、ヒト感情推定のために構築しつつあるモデルに基づき、動物用モデルを構築する方法(転移する手法)、あるいは、疾患動物データをいかにヒト感情推定モデルの構築に活用するかについて検討を行いました。また、その基盤となる動物モデルのデータ収集を行いました。

[2022年度までの主な成果]
  • うつ病モデルの一つである社会的敗北ストレス(Social Defeat Stress:SDS)マウスモデルの実験系を構築
  • 発症過程を含む長期期間にわたり、マウスの複数の生体信号心電図、体温、血圧、加速度など)を連続的に取得可能な計測システムの検討
[2023年度の主な成果]

昨年度構築したSDSの実験系の妥当性検証を行いました。
また、生体信号の計測系の評価として、拘束ストレス前後での生体信号(体温、活動量)応答測定を行い、計測データにストレス応答に関する情報が含まれことを確認しました。また、うつ病の発症前から発症後に渡る長期連続計測を実施しました(図1)。

図1
図1

さらに、予備的解析として、発症前から発症後まので過程における生体信号ゆらぎの特徴量変化を解析しました。

3. 今後の展開

  • ヒト用に構築しつつある感情推定モデルを用いて、マウスの感情状態をどの程度推定可能であるかについて検証を行います。
  • マウスとヒトとで計測する生体信号データを活用した新たな感情推定モデルの構築を試みます。
  • SDSマウス等の生体信号データの計測を実施します。

(中村 亨: 大阪大学、山本 義春: 東京大学
内匠 透: 神戸大学)