成果概要
AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発[2] 普遍的感情状態空間の構築
2024年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。疾患モデルマウス(不安や恐怖行動が増大する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測し、ヒト計測データとの併用により、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。本項目は、下記の2つの研究項目からなります。
① 普遍的感情状態推定技術の開発
概要:動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。下記の研究項目で取得する動物でのIoT計測データとヒトでのIoT計測データとを併用することにより、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。
② 動物を対象とした生体信号・感情状態計測
概要:普遍的感情推定技術の開発に不可欠な動物IoT計測データを取得します。疾患モデルマウス(不安・恐怖行動が増加する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測します。
2. これまでの主な成果
動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目的に、ヒト感情推定のために構築しつつあるモデルに基づき、動物用モデルを構築する方法(転移する手法)、あるいは、疾患動物データをいかにヒト感情推定モデルの構築に活用するかについて検討を行いました。また、その基盤となる動物モデルのデータ収集を行い、取得データの解析を開始しました。
[2023年度までの主な成果]
- うつ病モデルの一つである社会的敗北ストレス(Social Defeat Stress:SDS)マウスモデルの実験系を構築
- 発症過程を含む長期期間にわたり、マウスの複数の生体信号心電図、体温、血圧、加速度など)を連続的に取得可能な計測システムの検討
[2024年度の主な成果]
社会的敗北ストレス(Social Defeat Stress: SDS)モデルにおけるうつの発症過程を含めた長期的な連続生体信号(体温、活動量)の計測を完了し、データ解析を開始しました。また、患者データの取得も完了し、生体リズム変調の観点から、動物とヒトに共通する不調状態の指標導出に着手しました。一方、動物および患者データ取得の遅延を補うために、既存のマウス啼鳴データを用いた解析を行い、音声データを通じて不安感情の種間普遍性に関する知見を得ました。さらに、自閉症モデルマウスの啼鳴データ分類に関するチャレンジ課題をINTERSPEECH 2025に提案し、採択されました。現在、この課題に対して国際的な共同解析が進められています。

3. 今後の展開
動物種を超えた普遍的な感情状態空間の構築を目指しています。そのために、疾患モデルマウスとヒトの計測データを併用し、生物学的な妥当性を備えた普遍的感情状態推定器の開発に取り組んでいます。
(中村 亨: 大阪大学、山本 義春: 東京大学
内匠 透: 神戸大学)