成果概要

AIoTによる普遍的感情状態空間の構築とこころの好不調検知技術の開発2. 普遍的感情状態空間の構築

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発テーマでは、動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。疾患モデルマウス(不安や恐怖行動が増大する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測し、ヒト計測データとの併用により、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。本テーマは、下記の2つの研究項目からなります。

  • ① 普遍的感情状態推定技術の開発
    概要:動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目指します。下記の研究項目で取得する動物でのIoT計測データとヒトでのIoT計測データとを併用することにより、生物学的妥当性を有する普遍的感情状態推定器を構築します。
  • ② 動物を対象とした生体信号・感情状態計測
    概要:普遍的感情推定技術の開発に不可欠な動物IoT計測データを取得します。疾患モデルマウス(不安・恐怖行動が増加する自閉症モデルマウスやうつ病感受性・抵抗性を有するマウス)や感情応答を誘発する刺激条件下(Social Defeat Stress:SDS)、あるいは薬剤投与等による変調を加えた状態での複数の生体信号(啼鳴、活動、心拍数・呼吸数など)を計測します。

2.2022年度までの成果

動物種を超えた普遍的感情状態空間の構築を目的に、ヒト感情推定のために構築しつつあるモデルに基づき、動物用モデルを構築する方法(転移する手法)、あるいは、疾患動物データをいかにヒト感情推定モデルの構築に活用するかについて検討を行いました。
一方、マウスを対象とした生体情報計測においては、1)マウスの生体信号の計測が可能な実験系の立ち上げ、2)社会的敗北ストレス(SDS)によるうつモデル作製のための実験環境の構築、3)ヒト用リング型デバイスによるマウスの生体信号計測の可能性の検証を行いました。
1)では、マウスの生体情報計測(心電図、体温、血圧、加速度など)のために新たに導入する機器のスペックを検討しました。
2)の実験環境の構築では、攻撃性の高いICRマウスを選別するための実験、あるいは、ICRとストレスを受けたB6マウスを同居させるための実験に、相当なスペースの確保が必要であったことから、そのためのスペース確保を行いました。また、社会的ストレスを与える、あるいはストレス後の社会性の試験を行うためにも実験スペースの確保が必要となったため、その確保に加え、実験に必要な装置の設置等を行いました。一方、本研究開発テーマでは、数多くのマウスを社会的敗北ストレス実験に使用することが必要になるため、ICRとB6を同居させるセパレーターも準備しました。
3)では、麻酔下のマウスを用いて、ヒト用ウェアラブルデバイスを用いて、マウスの複数生体信号の計測が可能かどうかを検証しました。実験での知見に基づき、マウスでのセンサ設置部位やデバイス本体のサイズ・形状などの検討を行いました。

3.今後の展開

  • ヒト用に構築しつつある感情推定モデルを用いて、マウスの感情状態をどの程度推定可能であるかについて検証を行います。
  • マウスとヒトとで計測する生体信号データを活用した新たな感情推定モデルの構築を試みます。
  • SDSマウス等の生体信号データの計測を実施します。

(中村 亨: 大阪大学、山本 義春: 東京大学
内匠 透: 神戸大学)