成果概要

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大規模・高コヒーレンスな動的原子アレー型・誤り耐性量子コンピュータ[1] 大規模・高コヒーレンスな動的原子アレー型・誤り耐性量子コンピュータ

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、レーザー光によって単一原子を捕捉する「光ピンセット」という技術を用いて、冷却原子量子ビットを大規模に配列させた、実用的な冷却原子型・誤り耐性量子コンピュータを構築します。特に、計算途中で原子量子ビットを自在かつ高速に移動させ、ゲート操作、誤り検出・訂正を行う動的な量子ビットアレーを実装します。さらに、一流のアカデミアと産業界との緊密な連携の下に、真空容器、レーザー光源、光学系、電子機器及びイメージングデバイス等の全ての構成要素を統合・パッケージ化し、従来に無い高い安定性とユーザビリティを達成します。これらのイノベーションにより、大規模な原子量子ビット配列を安定かつ高精度に制御し、2050年までに経済、産業、安全保障に革新をもたらす誤り耐性量子コンピュータを実現します。
目標の実現のため、次の項目について研究開発を進めています。1.原子量子ビットを収める真空容器の開発及び量子ビット配列の大規模化を通じたスケーラブルな冷却原子型量子コンピュータプラットフォームの開発、2.エラーの少ない高コヒーレンス・高忠実度量子ゲートの開発、3.冷却原子に特化した量子誤り検出・訂正アーキテクチャの開発(理論・実験の両面)、4.上記の研究開発の基盤となる冷却原子型量子コンピュータ専用の高安定・高強度小型レーザーシステムの開発。なお、量子ビットについては、多様性の観点からルビジウム(Rb)原子、イッテルビウム(Yb)原子及びストロンチウム(Sr)原子について研究開発を実施しています。

2. これまでの主な成果

量子コンピュータプラットフォームの開発においては、日本初となるフルスタック冷却原子型量子コンピュータ、および大規模な冷却原子型量子計算に特化した制御システムを開発しました。

図1
図1 フルスタック冷却原子型量子コンピュータ

高コヒーレンス・高忠実度量子ゲートの開発においては、
Rb原子を対象にした開発では、波動関数スクイージング・高精細光ピンセット・超解像度光イメージング・超高速ゲート用パルス強度揺らぎ抑制等、高忠実度量子ゲート操作のための基盤技術を確立しました。また、Yb原子を用いた2量子ビットゲート用リュードベリコヒーレント励起及び時計遷移量子ビットのコヒーレント制御に成功しました。

図2
図2 2量子ビットゲートのためのリュードベリコヒーレント励起(左)、時計遷移量子ビットのコヒーレント制御(右)

量子誤り検出・訂正アーキテクチャ開発においては、Rb原子系で測定後原子残存型非破壊測定の実現、および検出忠実度94%を達成しました。またYb原子系では、量子ビットの非破壊測定に利用可能な新超狭線幅光学遷移に対して魔法波長の決定に成功するとともに、この遷移を数10Hz程度のスペクトル幅で分光する事に成功しました。

高安定・高強度小型レーザーシステムの開発においては、Distributed Face Cooling(DFC) 構造による高出力小型レーザーの開発を行い、原子トラップレーザーに用いるCr:LiSAFとサファイア接合チップの試作に成功しました。またDFCチップによる新レーザー増幅構成で、超高速量子ゲート用高安定パルスを実現しました。

図3
図3 Cr:LiSAFとサファイアの接合チップ

3. 今後の展開

2026年度からの第二期プロジェクトにおいては、今期構築したフルスタック量子コンピュータを基に、1.インテグレーション技術や制御系の開発と高度化、2.誤り耐性に向けた高度化と大規模化、3.高忠実度量子計算を長時間継続できる高安定化のための開発、などを進め外部ユーザーが利用可能な量子誤り検出・訂正機能を備えた大規模かつ高機能な冷却原子型誤り耐性量子コンピュータの実現を目指します。また、このために必要となる高安定・高強度レーザーシステムの開発、および更なるブレイクスルーを可能とする様々な革新技術の開発を進めて行きます。