成果概要
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ネットワーク型量子コンピュータによる量子サイバースペース[3] 半導体ネットワーク型技術
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、半導体量子コンピュータをネットワーク化するための光子とシリコン量子ビットの量子インターフェース技術とシリコン量子ビット間結合技術を開発します。加えて光子による半導体量子コンピュータのネットワーク化技術の開発を推進します。これらの研究開発テーマの達成により、ネットワーク型量子コンピュータによる大規模化の道筋が得られ、ムーンショット目標6で目指す誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現に貢献します。
この達成に向けて、シリコン量子ビットで構成された小規模量子コンピュータをネットワーク化するために、シリコン量子ビット間の中長距離接続技術、通信波長帯光子との量子インターフェースであるゲルマニウム正孔量子ドット、もつれ光子対を用いた遠隔スピン量子ビット間のもつれ生成技術などを研究しています。半導体量子ビットの高い電気制御性、集積性、さらに通信波長帯光子との結合性など多くの利点を生かし、新しい量子インターフェースとネットワーク化基盤技術の開発に挑戦します(図1)。

2. これまでの主な成果
① ゲルマニウム量子ドットを使った光子―スピン量子インターフェースの開発
通信波長で動作する光子―スピン量子インターフェースとしてゲルマニウム量子ドットの開発を進めてきました。ゲルマニウム正孔量子ビットは近年、シリコン量子ビットと比肩する性能を示す新しい半導体量子ビットシステムとして注目を集めています。本プロジェクトでは、量子ドットの実現と、光子偏光から正孔スピンへの量子状態変換を可能にする光学遷移のための電子g因子の設計と量子ドットの実現を達成しました。
光子偏光から正孔スピンへの量子状態変換には従来の電子スピンへの量子状態変換の光学遷移に基づいて、正孔スピンに転写されるように電子と正孔のg因子を制御することが重要です。特に間接遷移型半導体であるゲルマニウムではΓ点の電子のg因子はほとんど知られていませんでした。そこで小芦PJ都倉PIと共同して、k・p法により歪んだゲルマニウムのΓ点伝導体のg因子が-2.8程度であることを明らかにしました[K.Imakire, A. Oiwa, and Y. Tokura, Jpn. J. Appl. Phys. 64, 071001 (2025).]。報告がある価電子帯の正孔のg因子が0.3程度であることを考慮し、光子偏光から正孔スピンへの量子状態転写を可能にするΓ点での光学遷移を提案しました。
一方で、ゲルマニウム量子ドットの開発において、量子ドットとしての動作を実現しました。ゲルマニウム量子ビットはシリコン量子ビットと比肩する量子ビット性能が報告され、近年注目を集めるシステムですが、まだ世界的にもその作製技術は確立しているとは言い難い状況でした。樽茶PJの小寺PIとフランスⅭEAのグループとの共同研究により、プロセスでの難点を改善し、ゲルマニウム量子ドット動作を実現しました(図2)。

② 極低温光学系ともつれ光子対源の導入
小規模量子コンピュータのネットワーク化のため、量子もつれ光子対源を導入し、遠隔のスピン量子ビット中の電子(あるいは正孔)スピンへそれぞれの光子をコヒーレントに変換することで、遠隔量子ビット間のもつれを生成する実験を進めています。希釈冷凍機中に光を導入し、量子ビットへ正確に照射するために光ファイバーの光学系とピエゾステージとを組み合わせた極低温光学系を開発し、その特性評価を完了し、希釈冷凍機に導入しました。また非線形光学結晶を使った標準的な自発パラメトリック下方変換システムを構築し、もつれ光子対を光ファイバーで希釈冷凍機まで伝送することが可能になりました。
3. 今後の展開
遠隔量子ビット間のもつれ生成の実験を実施することができる段階まで準備が整いつつあります。ゲルマニウム量子ドットでのスピン検出など量子ビット技術を実現し、また本プロジェクトで新たに見出したブルズアイ光学共振器による変換効率の向上などの技術を組み合わせ、スピン量子ビットの量子ネットワーク型量子コンピュータ実現のための基盤技術の実証を目指した研究を推進します。