低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2020-PP-12

家庭部門の地域別消費構造と直接および間接的二酸化炭素排出量の評価

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 パリ協定を受け日本は約束草案として温室効果ガスの排出量を2030年度までに2013年度比で26%削減を提出し、取り組みを進めてきた。さらに2020年10月、菅首相は2050年の脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した[1]。

 脱炭素社会の実現には電気、ガス、ガソリンなど家庭部門のエネルギー消費による直接的な二酸化炭素(CO2)排出だけでなく、食品や住居などエネルギー以外の消費財の製造段階での間接的なCO2排出にも着目する必要がある。一方で、消費の構造は所得や地域などで変化するものであり、少子高齢化に伴う人口減少や世帯形態の変化等、地域社会経済の変動を考慮しつつ徹底した削減努力が不可欠である。そこで本提案書では、まず全国消費実態調査[2]から家庭部門のエネルギー財消費による直接的排出量を地域別に推計する。次いで、産業連関表[3]を用い、家庭部門の非エネルギー財を含む消費活動全般から波及する間接的CO2排出を消費品目単位で把握する。さらに結果を2030年に延長して人口減少を念頭に置いた2030年のCO2排出量の将来予測分析を行う。
 分析の結果、2015年から2030年の間の全国合計の消費支出増加率は、年間収入の増加率を4.2%上回った。「電気代」と「都市ガス」は年間収入や人口、世帯形態の変動により影響を受けにくい品目である一方、「住居」、「教育」は年間収入の相違とともに地域性が大きく影響していることが明らかとなった。また、2030年のCO2排出量合計は2015年と比較すると直接分では約10.2%の減少となる一方、間接分を含めた排出量では約1.3%の増加となると推計された。特に間接分を含む場合、世帯当たりのCO2排出量は、「石油製品」と「都市ガス」について大都市およびその周辺では2015年比で増加している一方、東北地方では「石油製品」で12%~30%、「都市ガス」で5%~21%減少し、明確に地域性がみられた。電源のCO2排出70%削減とエネルギー機器の電化の二つのシナリオ分析では、直接分より間接分を含めたCO2排出量の削減幅が小さくなった。以上の分析により、効率的な排出削減のためには、消費の地域性を考慮したうえでCO2排出削減のための包括的な温暖化政策を講じていくことが必要である。

提案書全文

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