低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-12

蓄電池システム(Vol.8)
—全固体リチウムイオン電池の製造コスト計算と研究課題—

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13
  • SDGs11
  • SDGs12

概要

 リチウムイオン電池(LIB)は、電気自動車等の移動体用電源や太陽光発電・風力発電等の再生可能エネルギーを安定に供給するための定置型蓄電システムにも利用されており、持続可能な低炭素社会の実現に関わる重要な技術要素の1つである。しかし、LIBには可燃性の有機電解液が含まれているため液漏れや内部短絡・過充電した場合に発火・爆発を生じることが懸念される。

 近年、LIBの高エネルギー密度化とともに安全性に対する要求が高まるなか、有機電解液の代わりに無機固体電解質を用いる試みが注目されている。本提案書では、電解質に硫化物系固体電解質を用いた全固体LIBに焦点を当て、ラミネート型セルを設計して製造コストを計算した。その結果、全固体LIBの現状モデルの製造コストは61~356円/Whであり、従来LIB(14円/Wh)の約4~25倍高い値であった。全固体LIBの製造コストが高くなる主因としては、(1)固体電解質の価格が高いこと、(2)固体電解質の使用量が多いこと、(3)硫化物系固体電解質を用いることにより生じる製造プロセスコストが高いことが挙げられる。製造コストと電池性能の要求水準を満たす全固体LIBとするには、所望の物性(良好なリチウムイオン伝導性、化学的・電気化学的安定性、低圧プレスで良好な界面を形成し得る柔軟性など)を有し、かつ、安価に提供し得る製造プロセスとなる固体電解質材料を検討することが重要である。

提案書全文

関連提案書