低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2018-PP-21

低炭素社会に向けた技術革新の影響評価のための動学エネルギー経済モデルの開発

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概要

 気候変動緩和目標達成のためには断固とした炭素排出削減策が必要なことは広く認識されており、2016年のパリ合意を受け、日本政府も2030年には2013年比で26%の炭素排出削減を公約し、さらに2050年には80%削減目標を掲げている。同時に、この低炭素社会実現が、従来の省エネルギー活動や低炭素燃料への代替の延長のみでは実現が困難であり、日本の産業部門、民生部門、輸送部門の構造的変化と革新的技術の導入による大規模な緩和策の導入が必要なことも明らかとなってきた。

 低炭素社会実現のための道筋について、日本政府も「長期低炭素ビジョン」やエネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI2050)、2018年の第5次エネルギー基本計画などで検討を進めている。省庁のほか、科学技術振興機構低炭素社会戦略センターの小宮山、山田による新ビジョン2050をはじめ国立環境研究所、地球環境産業技術研究機構などの研究機関も公約実現への道筋を検討している。ここで、温暖化対策が社会に持続可能な形で受け入れられるためには、対策の社会経済影響の事前評価が重要なことは疑いない。
 本開発では二つのエネルギーモデル開発を行う。一つは、部門別の過去のエネルギー需要の推移を統計的方法で解析した計量経済モデルに関するもので、短期的なエネルギー価格の変動や急速な技術進歩による市場の変化が及ぼすエネルギー需給の変化を扱う。この短期シミュレーションモデルはカーボンプライシング導入などエネルギー価格の変化に対する過渡的な応答や、特に中国で急速に進む自動車の電動化を日本に適用した場合の計算を可能とする。
 もう一つのモデルは、多部門動学的エネルギー経済モデルであり、ここでは産業連関モデルとエネルギーフロー技術を統合した動学的最適化が行われる。ここでは、執筆者によって開発された世界動学的エネルギー経済統合モデルTHERESIA[1,2]の日本地域のみを取り出し、日本独自のデータベースの適用や実行上の操作性を上げることで部門の細分化や技術の詳細化を行う。これにより低炭素社会のための新しい技術や制度の導入が複数の産業分野間への波及を通し、マクロレベルでの社会経済へどう影響するかを定量的に評価しようとするものである。例えば鋼種別の製品需要と下流製品の原材料変化を考慮したうえで鉄鋼業への低炭素化の影響と緩和の拡大にボトルネックとなっている技術課題の抽出を行う。現段階では、THERESIAモデルの日本地域モジュールに対してシミュレーション期間の延長や炭素排出制約などの挙動の確認を行い、予備的なモデル開発の検証を行った。

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