低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2016-PP-21

地球温暖化緩和技術のバリューチェーン評価と統合的貢献アプローチ(Integrated Contribution Approach)
—ケーススタディ:太陽光発電システム—

概要

 気候変動は地球規模の問題であり、LCSでは、以下BOXに示した4つの視点から、世界経済の成長と地球温暖化の克服の両立に向けた、我が国の国際戦略を検討している。2014年に温室効果ガス削減に有効な国際的枠組みの考え方として、エネルギー・環境技術の普及促進と移転によるIntegrated Contribution Approach(統合的貢献アプローチ、ICA)を提案した。

 緩和の貢献度の視覚化と定量化を進めることで、先進国と途上国双方に様々なメリットと機会をもたらすものと期待できる。統合的貢献アプローチの主旨は、技術革新、技術移転・協力、そして、世界の実質的な温暖化ガス削減を目指す、という点で、2015年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)で採択されたパリ協定で確認された今後の温暖化枠組みの進む方向性とも合致している。2015年発行のLCS提案書(FY2014-PP-15、2015年3月)では、太陽光発電を例にとり、ポテンシャル種別毎の地域別削減量を試算し評価することで、ICAの4つの柱に関連し、1.技術開発、2.技術移転、3.削減量定量化、および4.プロジェクト推進のためのファイナンススキームへの示唆を得た。本稿では、技術が世界で製造され利用されることによる経済効果を広く評価するため、バリューチェーン分析を行った。具体的には、太陽光発電システムを例にとり、セル、モジュール、インバータなど周辺設備について、製造、普及に関する様々な「日本」が関係する流れを定量的にとらえ、バリューチェーン全体から誘発される経済効果を、日本、他先進国、途上国別に試算した。この結果から、太陽電池の日本企業による製造や、国内における利用が増えることでの経済効果は世界全体で1.6兆円となり、日本に対してはそのうちの62%、他先進国へは8%、途上国へは30%であることがわかった。材料費、設備費など費用別、あるいは、製造、設置段階など段階別に検討し、今後の技術移転戦略ひいてはICAにおける技術利用による気候変動緩和の国際戦略への足がかりを得た。

LCSからの次期枠組みに関する提案の基本となる4つの視点
  • 実質的にGHG削減につながる、公平かつ実効性のある仕組み
  • 民間の投資インセンティブを促進し、途上国の経済発展にある様々なビジネスチャンスを活用する仕組み
  • セクター別のエネルギー効率、温室効果ガス排出原単位の改善と評価をもとに、国内の枠組みと国際的な技術移転の枠組みの双方に展開できる戦略
  • 日本国の持続可能な発展と地球規模問題の改善に貢献する仕組み

提案書全文

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