低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2015-PP-01

太陽光発電システム(Vol.3)
—定量的技術シナリオに基づくコスト低減技術評価(タンデム型を含む高効率化合物系太陽電池)—

概要

 太陽光発電システムは広く普及し始めているが、大規模な導入に向けて更なるコスト低減が不可欠であることから、低炭素社会戦略センター(LCS)では、将来の技術開発を考慮したコスト削減技術を評価している。既報では各種太陽電池を対象に分析し、2030年に太陽光発電システムの発電コストが5円/kWhに達成する道筋を示した。中でも低コスト実現可能となる薄膜化合物太陽電池では、高効率化技術が重要技術開発項目であることを示してきた。

 本稿では、構造の異なる4端子型・タンデム型を含む高効率化合物系(CIGS・III-V族)太陽電池を対象とし、コスト低減技術の開発達成時期を明確にした定量的技術シナリオを構築し、将来の経済性を評価した。その結果、現状技術の単層CIGS太陽電池では、システム導入原価125円/Wから2020年に97円/Wへのコスト低減が見通された。2030年以降の技術水準として、タンデム型技術が達成されると、システム導入原価50~70円/Wと試算され、構造の違いによる技術水準を考慮した評価の必要性を示した。高効率化のためには、積層技術の抜本的な改良と結晶成長技術や界面制御技術などの加速が重要である。III-V族太陽電池については、高効率な一方でモジュール製造原価が高く、10倍以上の生産性の向上が必要である。集光型においても集光システムの抜本的な改良が求められる。
 また、既報の評価との比較から、2009年から2015年にシステム導入原価が253円/Wから125円/Wへと半減してきたことを示した。このコスト低減の要因は、高効率化、市場拡大による原材料・周辺システム(BOS)のコスト低下、製造機器等のコスト低減、生産性の向上に関する技術であり、その影響を評価している。このように、技術進歩や市場拡大を考慮して設計・評価を継続することが必要である。

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