
取材レポート
令和6年度 第1回 JSTワークショップ 公正な研究活動の推進- 研究倫理教育映像教材「研究活動のグレーゾーン」の利活用を考える-報告

*「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」はこちらから視聴いただけます。 https://www.jst.go.jp/kousei_p/measuretutorial/mt_movie.html
講義 研究倫理教育映像教材「研究活動のグレーゾーン」の利活用を考える
早稲田大学教授 札野 順 氏

研究公正教育の現状や課題、疑わしい研究行為の現状について説明された後、特に強調されたのが、PIやシニア研究者への研究公正(倫理)研修の重要性についてです。欧米では「研究不正を防ぐことから研究公正を推進していく方向に移行してきている」と述べられ、SOPs4RI(Standard Operating Procedures for Research Integrity)(https://sops4ri.eu/)を紹介されました。

それを踏まえ、研究公正教育を単に研究者に何をすべきか伝えたりすることのみでなく、研究を改善する方法を考える機会として位置づけることを提案されました。 具体的には、「倫理の空白Ⅲ」を用いて、よりよい研究を行うための「研究室マネジメント」に関するPI向けの研修として、研究公正の観点から考えられる点を列挙するとともに、研究室の学生に対してどのように教育するのか考案するようなものを例示されました。

講義 研究公正の意識を自律的に醸成する取り組み
広島大学准教授 野内 玲 氏

VIRT²UE Projectの枠組みは、研究者が法令やルールに基づいて行動するだけでなく、専門職として何が望ましいかを考えて行動することにあることを野内氏は述べられました。このプロジェクトでは、シニアから中堅の研究者を対象としており、自己学習、ワークの進行に必要な教育スキルの習得、課題を実際に実践すること、フォローアップを通して研究公正(Research Integrity)のトレーナーを養成するものとなっています。研究者は、教育者として責任ある研究活動について理解し、リフレクション(内省化)する機会になると指摘されました。

そして、このプロジェクトのエッセンスを活用し、映像教材を使って同じ立場や職種にある者同士でトレーニングを行い、学生達に教育を実践し、フォローアップを行うといった講習を実施できるのではないかと提案されました。
グループワーク
グループワークでは、映像教材の活用方法について参加者に考えていただきました。前半の25分では、問題となる場面や違和感を持つ場面などをあげ、どのような問題があるか・どのように研修等に活用できるのかを検討し、それを踏まえて後半の25分では、映像教材を使ったPI向けの研修を組み立てていただきました。グループのメンバーで意見を共有しながら、皆さん熱心に取り組まれていました。全体講評
野内氏は研究論文等のオーサーシップについてふれ、「著者になるということは責任を伴うことであり、研究不正があれば連帯責任になることもある。安易に共著者となったりすることには一歩立ち止まったほうがよい。何のために研究をするのか、知りたいことがある、探求したいことがあるから研究するのだといったことに立ち返るとよいのではないでしょうか」と話されました。
アンケートでは参加者から、「実践に生かせそうなアイデアが得られた」「多様な参加者が熱心に取り組んでおり、モチベーションが上がった」といったご意見をいただき、また、今後の課題として、研究者の時間確保や意識改革などがあげられました。
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