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戦略的創造推進事業CREST研究領域 > DVLSI

研究領域

戦略目標

研究領域名

ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術
研究領域HP

研究総括

浅井 彰二郎((株)リガク 取締役副社長)

概要

 本研究領域は、VLSIシステムの高信頼・高安全性を保証するための基盤技術の研究開発を対象とします。人類の諸活動が情報システムに依存する度合いは増す一方であり、その信頼性・安全性の確保はきわめて重要な社会的課題です。そのエンジンであるVLSIも、それ自身が膨大な数の回路素子を含む巨大システムであり、その信頼性・安全性は情報システムの信頼性・安全性のコアとなるものです。VLSIシステムを、信頼性・安全性に配慮しつつさらに大規模化するため、横たわる多くの課題を解決することが本研究領域の目的です。
 具体的には次のような研究課題が含まれます。まず素子寸法の極限的な微細化にともなう物理的な揺らぎ、一過性雑音事象、使用にともなう劣化などが問題です。こうした不安定要因は、直接誤動作の原因となるのみならず、VLSIの大規模化にとっての阻害要因であり、その影響を緩和する素子レベル、回路レベル、システムレベルの新技術の研究開発が必要です。一方、微細化による大規模化が限界に近づいているため、多数のチップを3次元的に実装することによる大規模化と、それにともなう信頼性・安心性の確保も大きな課題であり、研究開発が必要です。規模の拡大と複雑化にともなう設計上のミスを排除し、設計・検証・製造・検査を容易化する設計の方法も研究開発課題です。信頼性・安全性へのVLSIシステム内外からの脅威を動作中に検出し、封じ込め、緩和するアーキテクチャー、回路の研究開発も必要となります。VLSIシステムへの要求事項は、用いられる情報システムの特性から決まりますが、新しく信頼性・安全性の仕様規定、評価尺度を作り上げて行くことも本研究領域の研究開発課題です。

平成21年度採択分

研究課題
自己修復機能を有する3次元VLSIシステムの創製
研究代表者(所属)
小柳 光正  (東北大学未来科学技術共同研究センター 教授)
概要
3次元LSI技術と超並列処理技術を駆使して、自己修復・自己組織化・自己調整・再構成・自己診断などの機能を有する新しいディペンダブルVLSIを世界に先駆けて開発します。VLSIにLook-Up Tableを用いた関数発生回路を搭載して、冗長回路や自己診断回路として使用します。また、これらの冗長回路や自己診断回路の一部を動的に論理回路に転用できるようにして、回路の柔軟性と効率を高めます。
研究課題
ディペンダブル ワイヤレス ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)
研究代表者(所属)
竹内 健  (東京大学大学院工学系研究科 准教授)
概要
テラバイト容量のNANDフラッシュメモリを搭載し、書き換え回数やデータ保持時間の増加など使用に伴うメモリの信頼性の劣化、接触不良、動作中の電源遮断や水への接触などの人的エラー、人体との接触による静電気破壊(ESD)など、各種エラー要因に対してディペンダブルな、1mmの通信距離で10Gbpsの超高速無線通信・給電機能を持ったワイヤレス ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)およびホストシステムを開発します。
研究課題
耐タンパディペンダブルVLSIシステムの開発・評価
研究代表者(所属)
藤野 毅  (立命館大学理工学部 教授)
概要
ICカードのように、LSIを利用して金銭情報や個人情報を保管するシステムが社会基盤として広く普及しており、信頼性・安全性保証の重要性が非常に高まっています。LSI動作時の消費電力や電磁波の観測または開封調査により、機密情報の窃取・回路の複製(偽造)による人為的な攻撃が可能です。本研究では、このような攻撃に対する耐タンパ性を備えたディペンダブルLSIを実現する手段を確立することを目的とします。
研究課題
組込みリアルタイムシステム用ディペンダブルSoC及びSiPに関する基盤技術の研究
研究代表者(所属)
山ア 信行  (慶應義塾大学理工学部 准教授)
概要
本研究では、組込みリアルタイムシステムの構築をターゲットとし、SoC (System-on-Chip)およびSiP (System-in-Package)をコデザインすることでディペンダブルで実用的なVLSIシステムを実現する基盤技術に関する研究を行います。実用的な組込みリアルタイムシステムを構築するために、アプリケーション(ロボットおよび宇宙開発への応用)とソフトウェア(OS)およびハードウェア(アーキテクチャ)のコデザイン、SoCとSiPのコデザイン、およびそれらの設計・実装・評価手法の研究を行います。

平成20年度採択分  中間評価

研究課題
フィールド高信頼化のための回路・システム機構
研究代表者(所属)
梶原 誠司  (九州工業大学大学院情報工学研究院 教授)
概要
VLSIの製造プロセスの微細化とともに、製造時の出荷テストだけでなく、運用時の故障発生への対応が重要な課題になっています。本研究では、フィールドでシステム動作しているVLSIの劣化や故障をアダプティブなパワーオンテストで検出し、誤動作による障害が発生する前に警告や予防修復可能とする新しい回路・システム機構を提案します。本研究では、故障発生までの平均時間を延ばすだけでなく、ユーザにも安全・安心なシステムを提供することを目指します。
研究課題
超高信頼性VLSIシステムのためのディペンダブルメモリ技術
研究代表者(所属)
吉本 雅彦  (神戸大学大学院工学研究科 教授)
概要
ディジタルVLSIのディペンダビリティを確保するためのメモリ技術の確立を目指します。微細化に伴うプロセスばらつき/ランダムばらつき、動作環境変動、経年劣化、ソフトエラーなどの各種エラー要因に対し、マージン不良を出さない設計技術(防錯)、不良予知診断技術(預錯)、不良回避技術(除錯、容錯)を、デバイス、回路、アーキテクチャ、アプリケーションにわたる垂直統合型の研究で開発します。
研究課題
ディペンダブルネットワークオンチッププラットフォームの構築
研究代表者(所属)
米田 友洋  (国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系 教授)
概要
次世代半導体技術を生かした大規模VLSIを構築しようとすると、冗長・不要部分の増加や局所的な劣化故障により、物理的・コスト的な実現性低下、性能低下、信頼性低下という問題が生じます。本研究では、これらの問題を解決し、多数のユニットが適応的に協調動作できる、高ディペンダブルなネットワークオンチッププラットフォームを実現するための技術を開発するとともに、車載制御系システムをターゲットとしたプロトタイプに適用し、評価を行います。

平成19年度採択分 年報 中間評価

研究課題
ロバストファブリックを用いたディペンダブルVLSIプラットフォーム
研究代表者(所属)
小野寺 秀俊 (京都大学 大学院情報学研究科 教授)
概要
デバイスの極限的微細化に伴う製造性の劣化、特性ばらつきの増加、経年劣化、ソフトエラーなどの克服を目指して、ばらつきに強靭なロバストファブリックを構成要素とし、高信頼化構造の実現や劣化部分の自己修復が可能な再構成可能VLSIプラットフォームについて研究します。本プラットフォームにより、衛星利用からコンシューマ用途まで、様々なディペンダビリティを持つ組み込みシステムが実現できることを示します。
研究課題
アーキテクチャと形式的検証の協調による超ディペンダブルVLSI
研究代表者(所属)
坂井 修一 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
概要
情報社会の中心部品であるVLSIを正しく設計し、無故障にする技術を目指し、回路設計技術からアーキテクチャまでを総合的に研究開発します。具体的には、形式的検証手法の新規開発、フィールドプログラマブルな回路の導入、タイミング故障の動的防止回路の導入などによって、VLSIの信頼性を飛躍的に向上させます。研究成果は、設計支援ツール群や新回路・新アーキテクチャとして産業界に還元し、半導体・家電・自動車・航空・宇宙などにおける日本の産業競争力を強化するための技術的基盤を創ります。
研究課題
ディペンダブルワイヤレスシステム・デバイスの開発
研究代表者(所属)
坪内 和夫 (東北大学 名誉教授)
概要
広域・超高速ワイヤレスアクセスを実現するために、複数の無線通信システムを統合し、伝送距離・通信速度・消費電力・QoSの最適制御を行うディペンダブルWireless NGN LSI の実現を目指します。周波数領域等化補償の適用などにより低BERを実現するブロードバンド・オールシリコン Mixed Signal CMOS チップセット開発を行います。高速移動と超高速通信速度を両立する無線端末の実現に寄与します。
研究課題
統合的高信頼化設計のためのモデル化と検出・訂正・回復技術
研究代表者(所属)
安浦 寛人 (九州大学 理事(副学長))
概要
ディジタルVLSIのディペンダビリティを確保するためのシステム・RTレベルにおける設計フローの確立を目指します。種々のエラーのモデル化とディペンダビリティの評価指標を定義し、指標の評価技術、ディペンダビリティを向上させる設計技術を開発します。これらの成果をツール化し、既存の設計フローに組込んで、コスト・性能・消費電力とディペンダビリティのトレードオフを考えた設計ができるフローのプロトタイプを構築します。
(*研究者の所属は2011年4月現在のものです)