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中村匡良(Prof. Masayoshi Nakamura)個人ページ
名前:中村 匡良 教授 Prof. Masayoshi Nakamura
所属・役職:埼玉大学大学院 理工学研究科 教授、名古屋大学 ITbM, 連携研究者(客員教授)
役職(ERATO):ERATO 豊田植物感覚プロジェクト 植物分子遺伝学グループ グループリーダー
学位:博士(バイオサイエンス)(奈良先端科学技術大学院大学、2009年取得)
専門:細胞生物学、ライブセルイメージング
出身/趣味:京都府京都市、三重県伊勢市/サッカー、ラジオ
研究キーワード: 細胞骨格 微小管 ライブセルイメージング シロイヌナズナ 左右性 SWEET輸送体
Email:masnaka[at]mail.saitama-u.ac.jp ※[at]は@に変換
研究者をめざしたきっかけ
植物細胞内での微小管のダイナミックな動きを観察した時、運命を感じました。
研究紹介
研究概要
植物の形態形成と細胞骨格、生体分子動態の可視化と代謝制御ツールの開発
やさしい説明(一般向け)
植物の細胞の中では、目には見えない分子や骨格が絶えず動きながら、葉や茎の形づくりや環境への応答を助けています。たとえば、細胞内の「微小管」という糸のような骨組みは、光や重力に反応して向きを変え、植物の形を調整する重要な役割を果たします。
私たちの研究室では、特殊な蛍光タンパク質や顕微鏡技術を使って、生きた細胞の中で分子や骨格の動きをリアルタイムで観察しています。また細胞の代謝を見える化するための「バイオセンサー」も開発し、植物が環境の変化にどのように対応するかを分子レベルで解き明かそうとしています。
研究の興味
移動能力を持たない植物にとって、絶え間なく変化する環境を的確に感知し、それに応答することは、生命維持において極めて本質的であり、植物が進化の中で獲得してきた最も卓越した能力の一つです。代謝物の精緻な分配や細胞形態の制御は、そのような応答の一環として位置付けられます。私たちの研究室では、生体分子の時間的・空間的なダイナミクスを可視化・定量化することで、植物が発生過程や環境変動にどのように適応しているのかを分子レベルで解明することを目指しています。
また、細胞スケールの情報が組織や器官レベルの形態形成へと統合されていく過程にも着目し、多階層的な視点から植物の適応戦略を理解しようとしています。
現在の研究テーマ
① in vivo
biochemistry:タンパク質工学とバイオセンサー開発
植物の発生や環境応答に関わる細胞機能を理解するためには、細胞内で進行する生化学的および生物物理的プロセスを、リアルタイムかつ高空間解像度で定量化することが不可欠です。
私たちは、蛍光タンパク質を用いて、生体分子を可視化・定量化するためのバイオセンサーなど、革新的なイメージングツールの開発に取り組んでいます。また、代謝物のシグナルネットワークを理解するため、化学合成的アプローチを用いて、代謝物の動態を精密に制御可能なツールの構築も進めています。
② 植物の形態形成と細胞骨格
植物は、成長の過程や環境の変化に応じて、形態を動的に変化させます。特に、細胞形態の形成においては、細胞膜直下に配向する表層微小管と呼ばれる細胞骨格構造のパターンが重要な役割を果たします。これらの微小管は、重力、機械的刺激、光、植物ホルモンなど、さまざまな外部・内部シグナルに応じて、その構造と配向を柔軟に変化させます。
私たちは、ケミカルジェネティクス、生化学的手法、ライブセルイメージングなどを統合的に活用し、植物の形態を支える細胞骨格の時間的・空間的制御メカニズムの解明を目指しています。
ひとことメッセージ
「いつ」「どこで」「誰が」「何をしているのか」
一一分子・細胞レベルの現象が、最終的に植物個体の形態形成や環境応答にどのように結びつくのか
という、スケールを超えた問いに挑んでいます。見えない世界を可視化する技術をともに磨きながら、そこに潜む植物の不思議と美しさを一緒に楽しみましょう。
学歴
- 2003年京都大学 農学部 生物生産科学科 卒業
- 2009年奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科, 博士課程 修了
職歴
- 2025年〜現在埼玉大学大学院 理工学研究科, 教授/ERATO 豊田植物感覚プロジェクト グループリーダー
- 2025年〜現在名古屋大学 ITbM, 連携研究者(客員教授)
- 2021年〜2025年名古屋大学 ITbM, Co-PI (特任准教授)
- 2017年〜2021年名古屋大学 ITbM, Co-PI (特任講師)
- 2012年〜2015年HFSP Postdoctoral Fellowship; Carnegie Institution for Science, USA
- 2011年〜2017年Postdoctoral Fellow; Carnegie Institution for Science, USA
- 2011年〜2014年奈良先端科学技術大学院大学, グローバルCOE国際リサーチフェロー
代表的な論文
- 1. Isoda R, Palmai Z, Yoshinari A, Chen LQ, Tama F, Frommer WB*, Nakamura M*. (2022). SWEET13 transport of sucrose, but not gibberellin, restores male fertility in Arabidopsis sweet13;14. Proc Natl Acad Sci USA 119: e2207558119. DOI
- ▶︎「植物の膜輸送体の基質選択性を操作することに成功 ~二種類の基質を運ぶSWEET13の花粉成熟における機能が明らかに~」(2022年)|名古屋大学 研究成果発信サイト :日本語の解説記事
- 2. Yagi N, Kato T, Matsunaga S, Ehrhardt DW, Nakamura M*, Hashimoto T*. (2021). An anchoring complex recruits katanin for microtubule severing at the plant cortical nucleation sites. Nat Commun 12: 3687. DOI
- ▶︎「のり」が「はさみ」を連れてくる ~植物細胞のユニークな微小管形成の仕組みを解明~(2021年)|ITbM 研究ハイライト :日本語の解説記事
- 3. Iwatate RJ, Yoshinari A, Yagi N, Grzybowski M, Ogasawara H, Kamiya M, Komatsu T, Taki M, Yamaguchi S, Frommer WB*, Nakamura M*. (2020). Covalent self-labeling of tagged proteins with chemical fluorescent dyes in BY-2 and Arabidopsis seedlings. Plant Cell 32:3081-3094. DOI
- ▶︎SNAP-tagタンパク質を利用した植物生細胞イメージングの新手法(2020年)|ITbM 研究ハイライト :日本語の解説記事
- 4. Lindeboom JJ, Nakamura M, Hibbel A, Shundyak K, Gutierrez R, Ketelaar T, Emons AMC, Mulder BM, Kirik V, Ehrhardt DW*. (2013). A mechanism for reorientation of cortical microtubule arrays driven by microtubule severing. Science 342:1245533. DOI
- 5. Nakamura M, Ehrhardt DW, Hashimoto T*. (2010). Microtubule and katanin-dependent dynamics of microtubule nucleation complexes in the acentrosomal Arabidopsis array. Nat Cell Biol 12:1064–1070. DOI
- ▶︎中心体をもたないシロイヌナズナにおける微小管とカタニンとに依存した表層微小管の形成機構 |ライフサイエンス 新着論文レビュー :日本語の解説記事
最新情報およびその他業績: researchmap
受賞歴
- 2014年 Tansley Medal Finalist(New Phytologist)
- 2017年 Career Development Award(Human Frontier Science Program)
所属学会
- 日本植物生理学会
- 日本分子生物学会
- 日本植物学会
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