研究統括 

MESSAGE研究統括からのメッセージ

RNAは転写後に多様な化学修飾を受けることが知られています。現在までに、約150種類にもおよぶRNA修飾が様々な生物から見つかっています。私たちのグループはヒトの疾患がtRNA修飾の欠損で生じることを世界で初めて報告し、RNA修飾が生理機能に重要な役割を演じていることを示しました。その後、多くの疾患がRNA修飾の異常によって生じることが明らかとされ、私たちはRNA修飾病(RNA modopathy)という疾患の新しいカテゴリーを提唱しています。最近はRNA修飾の研究をエピトランスクリプトミクス(epitranscriptomics)と呼び、転写後段階における新しい遺伝子発現調節機構として、生命科学に大きな潮流を生み出しています。 本プロジェクトでは、RNA修飾が担う機能と、普遍的な生命現象との関わりを明らかにするために、RNA 修飾を「見つける」、「調べる」、「操る」をキーワードとする3つのサブプロジェクトを有機的に連携することで、RNA 修飾が司る生命機能ダイナミクスを探求し、将来的な創薬・治療のための技術基盤の確立を目指します。 RNA修飾を「見つける」では、ヒトを含め様々な生物から単離精製したRNA分子を高感度質量分析法(RNA-MS)を用いることで解析し、新規RNA修飾の探索と化学構造の決定、さらには修飾位置のマッピングを行います。 また、ナノポアシーケンスと深層学習を使うことで、RNA修飾の定量解析技術の開発にも取り組みます。 RNA修飾を「調べる」では、RNA修飾酵素やその遺伝子を同定し、RNA修飾の生合成や機能を明らかにします。 個々のRNA修飾酵素についてノックアウトマウスを作出し、その表現型からRNA修飾の生理機能を探求します。 また、RNA修飾の異常に起因する疾患(RNA修飾病)の発症機能の解明を目指します。 RNA修飾を「操る」では、RNA修飾を人為的に操作して遺伝子発現を制御することで、生命機能を積極的に制御し、将来的な創薬と治療のための基盤技術の確立を目指します。 本プロジェクトは専門分野の異なる4つのグループ、生化学G、生理学G、情報解析G、一分子計測Gによって構成されています。それぞれのグループは独立して研究を進めますが、各グループの特色を最大限生かすことで、可能な限り連携し、得られた成果を共有します。最終的に、エピトランスクリプトミクス研究において世界をリードする研究成果を生み出し、生命科学におけるパラダイムシフトを目指します。

鈴木 勉Tsutomu Suzuki
東京大学大学院工学系研究科 教授


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