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公開シンポジウム「延長された表現型の機構解明〜生物がいかにして他の生物を改変、操作するのか〜」を産業技術総合研究所つくば中央共用講堂で開催しました。

公開シンポジウム「延長された表現型の機構解明〜生物がいかにして他の生物を改変、操作するのか〜」を産業技術総合研究所つくば中央共用講堂(茨城県つくば市)で開催しました。

日時:2023年2月18日(土)13:00~16:00、19日(日)9:00~17:30
会場:産業技術総合研究所 つくば中央 共用講堂(茨城県つくば市)
https://www.aist.go.jp/aist_j/guidemap/tsukuba/center/tsukuba_map_c.html
オーガナイザー:佐藤拓哉(京都大学) 深津武馬(産業技術総合研究所)
主催:ERATO深津共生進化機構プロジェクト

開催趣旨:
 ERATO深津共生進化機構プロジェクトでは、昆虫―大腸菌人工共生系を用いた大規模進化実験、および培養困難な共生細菌の遺伝子操作や全ゲノムクローニングを可能にする新規技術開発を突破口として、さらに無菌マウス腸内での相互進化系に展開し、無脊椎動物から脊椎動物にわたる共生機構の共通性と多様性の理解をめざして研究に取り組んでいます(https://www.jst.go.jp/erato/fukatsu/)。
 そのような取り組みから不可避に顕現する重要な、しかし十分な解明のなされていない課題として、いかにして共生微生物が宿主生物の適応度に関与する性質に影響を与えるのか、その表現型、適応度効果、分子機構の関係の理解があります。宿主に正の影響を与えるなら相利共生、負の影響を与えるなら寄生的共生になりますし、寄生的でありながら共生微生物には有利な状況が実現するなら、それは共生微生物による宿主表現型の利己的操作とみなすことができますし、それらは包括的には、微生物が宿主という別の生物の表現型を規定するという、いわゆる「延長された表現型」という枠組みで捉えることができます。
 微生物共生に限らず、広く寄生/共生関係において、このような枠組みで捉えられる、きわめて興味深い現象が知られています。大部分は非モデル生物で見られる野外現象として記載され、研究が難しく理解が進んでいませんでした。しかし近年の技術革新によって、それらを分子機構の解析および理解に展開していくことが可能な時代が到来しました。
 このようなビジョンのもと、「延長された表現型の機構解明〜生物がいかにして他の生物を改変、操作するのか〜」というコンセプトで、エキサイティングな研究を展開している第一線の研究者を日本全国から一同に集めたシンポジウムを実施すべき時機であるという結論に至り、本シンポジウムを企画・開催いたします。

プログラム:
2月18日(土)シンポジウム1日目
13:00-13:40 深津武馬(産業技術総合研究所)
ご挨拶;ERATOプロジェクト紹介;本シンポジウム開催の経緯について
13:40-14:20 佐藤拓哉(京都大学)
寄生生物による宿主の行動操作:多様性と共通性を解明する異分野共同研究へ向けて
14:20-14:40 休憩
14:40-15:20 勝間進(東京大学)
ボルバキアによるチョウ目昆虫のオス殺し機構
15:20-16:00 沓掛磨也子(産業技術総合研究所)
ゴール形成昆虫による植物の形態操作 ―ゴールをつくる社会性アブラムシの昆虫-植物間相互作用―
シンポジウム1日目終了

2月19日(日)シンポジウム2日目
【セッション1 行動操作】
09:00-09:30 佐倉緑(神戸大学) ハリガネムシによる宿主カマキリの行動操作の生理メカニズム
09:30-10:00 西川義文(帯広畜産大学) トキソプラズマ原虫によるホスト・マニピュレーション
10:00-10:30 北條賢(関西学院大学) シジミチョウによる共生アリの行動操作の仕組みと機能
10:30-10:50 休憩
10:50-11:20 勝間進(東京大学) バキュロウイルスによる宿主昆虫の行動制御
【セッション2 生殖操作】
11:20-11:50 陰山大輔(農研機構) 昆虫の細胞質寄生因子が引き起こすオス殺し:その意義、多様性、起源、波及効果について
11:50-12:20 春本敏之(京都大学) ショウジョウバエ共生微生物によるオス殺し:オス殺し因子の作用機序を追究する
12:20-13:20 昼休み
【セッション3 形態操作】
13:20-13:50 徳田誠(佐賀大学) 陸生節足動物の体内に存在する植物ホルモン:植食性昆虫による寄主操作との関連
13:50-14:20 平野朋子(京都府立大学) ゴール形成昆虫の植物の操り方
【セッション4 発生・生理操作】
14:20-14:50 吉田聡子(奈良先端大学) 延長された表現型としての寄生植物―宿主植物の維管束連結
14:50-15:10 休憩
15:10-15:40 丹羽隆介(筑波大学) 宿主昆虫の組織成長を操作する寄生蜂の毒:ショウジョウバエとその寄生蜂を用いた研究
【セッション5 共生表現型変容】
15:40-16:10 細川貴弘(九州大学) カメムシ類における共生細菌垂直伝播時の精巧な行動
16:10-16:40 森山実(産業技術総合研究所) 共生細菌による宿主昆虫の表現型変容〜細菌由来色素を介したカメムシの体色形成〜
16:40-17:30 総合討論
シンポジウム終了

問い合わせ先:M-ERATO-International-Seminar-ml@aist.go.jp

主催:ERATO深津共生進化機構プロジェクト
https://www.jst.go.jp/erato/fukatsu/

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