プロセスインテグレーションによる機能発現ナノシステムの創製
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研究総括・研究領域

研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針(平成20年度)

 ナノ構造体の形成、物性解明、さらには機能発現に関する研究は、着実な進展を見せており、工学的な応用を図ろうとする気運が高まっている。これらの機能は情報通信分野、環境・エネルギー分野、ライフサイエンス分野における機器やデバイスに大きなイノベーションを引き起こす可能性を秘めている。しかしながら、ナノ構造体の工学的・産業的応用は大きな期待を受けながら、十分にその高いポテンシャルを具体的に提示できているとは言い難い。本研究領域では、これまで個々に技術蓄積がなされてきたナノプロセスを統合化し、新たな機能を有するナノシステムを創製することを目的としている。
 本研究領域のテーマ設定、遂行にあたっては、トップダウンプロセスとボトムアッププロセスのインテグレーション、ならびに異分野融合が、重要なキーワードであると考えている。以下にその理由を述べる。
 これまで、半導体の微細化によるデバイスの性能向上が電子機器の驚異的な発展を支えてきた。しかしながらトップダウンプロセスによる微細化が数十nmの領域に入り、その技術的、経済的限界が顕在化しつつあり、より微細な領域へは、自律的な化学反応を利用したナノ構造体の自己組織的な形成、即ち、ボトムアッププロセスが何らかの形で必要と考える。ボトムアッププロセスとトップダウンプロセスを組み合わせることで、原子・分子レベルまでのナノ構造体形成が可能になるだけでなく、ハイスループット、低コスト、省エネルギー生産が可能になり、広範な分野におけるナノシステムの展開が可能になると期待される。
 快適・利便で安全、安心な将来社会を実現するためには高度に発展した情報通信技術の活用が必要なことは言うまでもない。将来の高度情報社会においては、我々の身の回りに様々なセンサーが配置され、センサーからの情報は通信網にアップロードされ、通信網に接続された高性能コンピュータ機器によって情報処理される。これらのコンピュータ機器からは、個々人に必要な情報が必要な時に、多様な情報端末を通して提供される。そこでは高速に情報処理を実行し、情報を伝える電子デバイスや光デバイスだけでなく、人間の五感に対応する多様なセンサー、個々人の健康状態を、リアルタイムに、分子レベルでモニターするバイオチップ、上記のセンサーや情報端末にエネルギーを供給する高性能電池等々、多様なデバイスが必要になる。これらのデバイスは小型化、ウエアラブル化、タグ化された形で実装され、我々の身の回りに配備されるであろう。その実現のためには異分野間の技術融合が必要であり、それによって初めて集積化されたナノシステムへの展望が見えてくると考える。
 以上、上記では、次世代ナノシステムに関するひとつの考えを提示したが、これに限るものではなく、むしろ本研究領域の実行を通して、次世代ナノシステムの多様な可能性を探索し、そのイメージを固めると共に具現化していきたいと考える。その意味で、広範な分野からナノシステム実現への提案を募りたい。特に、新しい学問分野、新しい市場を切り拓くような異分野融合の提案を強く求める。工学的応用を図る意味では、産学連携による提案も歓迎する。また、これまでCREST等のナノテク関連プロジェクトで要素技術の開発がなされ、次のステップとして新たな機能を有するナノシステムとして工学的応用を目指す研究の提案も歓迎する。ただし、既に国からの支援がなされているトップダウン的発想による半導体ナノデバイス・MEMSに関する提案はここでは除く。テーマ選択に当たっては、提案内容の独創性が最重要ポイントであることは論を待たないが、ナノシステムとしての発展性、技術の波及効果としての広がり、産業的インパクトの大きさも十分に考慮したい。

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