動的ネットワークバイオマーカー
~未病状態を検出するバイオマーカー創出システム~
合原 一幸(東京大学)
陳 洛南(東京大学)
発明のポイント
未病状態を検出する新しいバイオマーカー(動的ネットワークバイオマーカー)を見出すシステムを開発
動的ネットワークバイオマーカーとは?
- ・動的ネットワークバイオマーカーとは、未病を検出するバイオマーカーで、種々の遺伝子発現の相関の変化を数学的かつ統計的手法で解析することで未病状態を把握できるバイオマーカーのこと
- ・従来のバイオマーカーは『病気になった状態』を検出するのに対し、本バイオマーカーは『未病状態』を検出できるため、病気を未然に防ぐことに貢献できる。
発明の概要
【動的ネットワークバイオマーカーを見出すプロセス】
健康状態(A)における生体分子(遺伝子やタンパク質など)に関し、それぞれの相関係数や標準偏差はいずれも均等で中レベルである。
未病状態(B)において、他のファクターに比べて、著しい特異な特性を示すファクター群(Z1~Z3 )が現れる。
- このファクター群を『動的ネットワークバイオマーカー;DNB』と呼ぶ。
疾病状態(C)になると、このファクター群の標準偏差は、他より少し大きな程度まで減少し、相関係数は均等で中レベルまで減少する。
特異な特性を示すファクター群は、『未病状態における警告信号』として利用できるため、DNBは未病状態を示すバイオマーカーとして利用可能
- ◎ Z1~Z6 : 生体分子(遺伝子やタンパク質など)に関するファクター
- ◎ ファクター間を結ぶラインの太さ : ファクター間の相関係数
- ◎ ファクターの丸印の太さ : ファクターの標準偏差(SD)
発明の効果
【DNBの総合指数の測定方法】
・DNBは以下の2条件下で現れる。
- a.遺伝子発現量の標準偏差が急激に上昇
- b.遺伝子間の発現量の相関係数が上昇
・DNBの総合指数は以下の式で測定できる。
総合指数(I)= SDd x PCCd / OPCCd
- ・SDd
- DNB内のファクターの標準偏差の平均値
- ・PCCd
- DNB内のファクター間のピアソン相関関数の絶対値の平均値
- ・OPCCd
- DNB内のファクターと他のファクターとのピアソン相関関数の絶対値の平均値
【DNB発見事例】
- 1. 糖尿病と肥満に関するDNBをマウスモデルで発見
- ⇒メタボリックシンドローム用DNBとして、147遺伝子を同定
SCIENTIFIC REPORTS, 9, 8767 (2019)
- 2. 肝細胞がん転移抑制に係る遺伝子として、CALML3をマウスモデルで発見
- ⇒肺転移の有無でCALML3遺伝子発現量に違いのあることを確認
Nature Communications, 9, 678 (2018)
想定される用途
- ◎ 新規バイオマーカーを見出すシステムとしての利用
- ◎ 未病診断に基づく疾病予防法としての利用
ライセンス可能な特許
- 1. 発明の名称:動的ネットワークバイオマーカーの検出装置、検出方法及び検出プログラム
国際公開番号:WO2014/050160
登録番号:特許第5963198号(1.98MB)、米国11328792(1.85MB) - 2. 発明の名称:ネットワークエントロピーに基づく生体の状態遷移の予兆の検出を支援する検出装置、検出方法及び検出プログラム
国際公開番号:WO2014/065155
登録番号:特許第6164678号(432KB)、米国10431341(1.41MB) - 3. 発明の名称:バイオマーカー検出方法、疾病判断方法、バイオマーカー検出装置、及びバイオマーカー検出プログラム
国際公開番号:WO2018/207925
登録番号:特許第7124265号(172KB)、米国11848075(1.43MB)