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“見えない・使えない”光を”見える・使える“光に!~有機・無機ハイブリッド材料開発による光情報の検出と操作~ (早稲田大学・石井あゆみ准教授)オンラインセミナーの動画を公開しました。

6月26日(月)、早稲田大学・石井あゆみ准教授のご研究成果について、オンラインセミナーを開催いたしました。動画を掲載しておりますので、当日参加いただけなかった方、もう一度ご覧になりたい方、是非ご視聴ください。

■ 開催概要

開催日時:
2023年6月26日(月) 15:00~16:30
開催方法:
ZOOMによるオンラインセミナー(事前登録制)
参加費用:
無料
セミナーの流れ:
15:00~ イベントの概要について
15:05~ 研究成果のご紹介
想定される有望な応用分野について
15:45~ 早稲田大学 石井研究室のご紹介、「近赤外光⇒可視光変換」実験デモ (司会:JST職員)
16:10~ 皆様からの質問へのご回答
16:25~ 終わりのご挨拶

■ 当日の録画

Part1 基盤技術説明、応用例紹介


Part2 研究室紹介、実験デモ、質疑応答

■ 技術のご紹介

はじめに

 石井研究室では、「見えない」光(弱い光や近赤外光、偏光)の情報を「見える」「使える」光(強い光や可視光、電気エネルギー・信号)とすることで、光の利用効率を抜本的に改善するべく研究を進めています。特に、無機ナノ結晶と有機分子を融合(ハイブリッド)した特異的な界面構造を利用し、近赤外や円偏光などの見えない光を操作(検出・変換・増幅)する光電子デバイスやナノ材料の開発を行っています。
 次世代光技術として、量子工学や生体機能における複雑な科学現象の解明や、光エネルギーの高効率利用を可能とする材料と素子の創成を目指しています。

基盤技術

有機-無機ハイブリッドによる光電流増幅と高感度光検出

 石井研では、微弱な光を増幅しセンシングする超高感度・低環境負荷な光検出素子の創成を進めています。これまでに、高い光吸収能・波長選択性を有する有機分子と、高い導電性・加工性を持つ無機半導体を化学的に融合したヘテロ界面の構築により、微弱な光信号を1000倍以上の電気信号として増幅する素子を開発しました。有機分子と無機半導体のヘテロ界面を利用した本系は、非常に低い駆動電圧(<1V)で光電流を増幅することができます。何100Vの高い駆動電圧が必要となるSiやGaAsなどの既存の増幅型光検出素子では達成できない、低電圧駆動型の高感度・高速応答の新しい光検出素子です。

微弱な近赤外光を可視光に変換する色素増感型アップコンバージョンナノ粒子

 アップコンバージョンとは、2つ以上の光子が連続して吸収されることで励起波長よりも短波長の光が放出される現象です。微弱な近赤外光などの長波長光(低エネ光)を可視光や紫外光といった短波長(高エネ光)に変換することが可能です。希土類イオンを含むアップコンバージョン材料は古くから研究がなされている一方で、希土類自身の光吸収能の低さや、著しく低い発光効率(1%程度)など、応用には課題が多くあります。
 そこで石井研では、太陽光程度の微弱な近赤外光を高い効率で可視光に変換することを目的とし、有機色素(配位子、エネルギードナー)と希土類イオン(エネルギーアクセプター)を界面で融合(錯形成)することで生じる分子内エネルギー移動を利用した色素増感型の新しいアップコンバージョン技術を確立しています。近赤外領域に高い光吸収能を持つ有機色素(インジゴ色素やスクアリリウム色素)をコアシェル構造のナノ粒子界面で希土類イオンと錯形成させることで、太陽光よりも微弱な近赤外領域の光照射により、青色や緑色のアップコンバージョン発光を促すことに成功しています。太陽光の中でもエネルギーとしての利用が難しい近赤外領域の微弱な光を可視光に変換できれば、太陽電池や人工光合成、光センサーなどにおける太陽光の利用効率(エネルギー変換効率)の飛躍的な向上が期待されます。また、組織透過性の高い近赤外光を可視光に変換する技術は、生体に対する新しい診断・治療法の開発にもつながります。

一次元らせん有機-無機ハイブリッド薄膜を用いた円偏光検出素子の開発

 石井研では、フィルターレスで円偏光を直接検出できる(光電変換する)新しい材料の開発を行っています。偏光は、人間の目では検出できない有用な情報を含みます。直線偏光の場合、物体表面の傷・異物・歪みなどの可視化ができ、円偏光まで見えると、複屈折(応力等)の強度・分布などまで識別できます。人間が偏光を検出するためには、カメラなどの偏光イメージセンサが必要ですが、偏光子の積層や位相差板(波長板)の使用により感度低下を引き起こすことが課題となっています。

 そこで石井研では、円偏光の直接検出するため、一次元らせん構造のペロブスカイト薄膜を作製しました。一次元らせんの回転方向は有機キラル分子により制御することができます。一次元らせんペロブスカイト薄膜を受光層として用いることで、右あるいは左円偏光を選択的に検出する光検出素子の作製し、円偏光を電流信号として直接検出することにも成功しました。円偏光の直接検出素子として最高値の検出感度を達成しています。

応用例

  • 広帯域・高効率な太陽電池
  • これまで可視化できなかった物体(生体物質を含む)のイメージングへの利用
  • 暗視カメラ
  • ロボット用視覚センサー
  • 透明材料(プラスチックやガラス等)の品質評価や製造工程の管理
  • 障害物検知による路面認識可能な車載カメラ

関連技術の展示会出展ポスター

■ 発表者のご紹介

石井 あゆみ

発表者:石井 あゆみ
<所属>
早稲田大学先進理工学部化学・生命化学科 准教授
<略歴>
2008年青山学院大学大学院理工工学研究科理工学専攻博士後期課程修了。ソニー株式会社の先端マテリアル研究所 研究員、帝京科学大学生命環境学部 准教授などを経て、2023年4月より現職。2017年~2021年にはJSTさきがけ事業「光極限」領域にて、一光子レベルで光をセンシングする技術の開発を行う。2021年には電気化学会女性躍進賞を受賞。2023年には第28回日本希土類学会奨励賞(足立賞)を受賞。
光り輝く社会の実現に向け「明るく!楽しく!!元気よく!!!」をモットーに研究を進めています。

石井あゆみ准教授の研究室Webサイト

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