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流れの「かたち」を「ことば」に!~二次元・三次元の流れパターンをトポロジー・力学系理論・離散数学を使って分類する新技術~ (京都大学・坂上教授)オンラインセミナーの動画を公開しました。

7月16日(金)、京都大学・坂上教授のご研究成果について、オンラインセミナーを開催いたしました。動画を掲載しておりますので、当日参加いただけなかった方、参加したけどもう一度ご覧になりたい方、是非ご視聴ください。

■ 開催概要

開催日時:
2021年7月16日(金) 15:00~16:30
開催方法:
ZOOMによるオンラインセミナー(事前登録制)
参加費用:
無料
セミナーの流れ:
15:00~ イベントの概要について
15:05~ 研究成果のご紹介
15:30~ 有望な応用分野においての研究例
15:45~ 京都大学・坂上教授、岐阜大学・横山准教授、日本ニューマチック工業株式会社・数本様による特別対談(司会:JST職員)
16:15~ 皆様からの質問へのご回答
16:30~ 終わりのご挨拶

■ 当日の録画

Part1 技術説明

Part2 実施企業・日本ニューマチック工業株式会社様との対談

Part3 質疑応答

■ 技術のご紹介

はじめに

医学・工学・環境・生命に関する多くの研究や開発フェーズでは、計算機シミュレーションや実験を通して必要な物理量を抽出することや、流体の流れを「可視化」して把握することなどが行われています。しかし、流れのパターンの状況やその微妙な違いを完全に区別し誰もが曖昧さなく理解できるように表現することは従来技術では難しいものでした。私達は、流線のパターンを幾何学の一分野であるトポロジーを使って分類し、それぞれに固有のグラフと文字列表現を割り当てる手法を世界で初めて開発しました。

「トポロジー」とは

数学の幾何学の一分野で、位相幾何学とも呼ばれます。たとえば、輪ゴムを変形させて三角形と円の形を作った場合、通常の幾何学では、これら二つの形は「違う図形」と考えますが、これらの形は同じゴムを変形しているため、互いに写り合うことができるので、位相幾何学では「同じ図形」とみなします。このように位相幾何学では、連続な変形を通しても写り合えない図形を異なるものと(おおらかに)見たときに成り立つ「図形」の性質を研究します。例えば球とラグビーボールやドーナツとコーヒーカップは同じですが、穴を切って開く操作は連続変形ではないので,球とドーナツの形は異なる形として認識されます。

図

コーヒーカップはドーナツへ連続変形するため、これらはトポロジー的に同じ形と言えます。

「ながれ」を「ことば」にするということ

私達の研究グループでは、流れに関するさまざまデータ(ベクトル場や粒子の軌道など)に対して、グラフ構造とそれを表現する文字列(COT表現)を一意に割り当て、それによってデータの「かたち」をトポロジーの視点で区別する技術を開発しました。これにより従来の方法では「いわく表現しがたい」流れの違いを文字列やグラフ構造の違いとして、それぞれの専門の立場を超えて、誰もが曖昧さなく表現できる「共通言語」として利用することができます。また、数学理論の詳細が分からなくても、文字列とパターンの対応関係がわかれば文字列による流れの理解は難しくありません。この文字列を参照することで、流れに関する様々な定量的・定性的情報を抽出することが可能になりました。

図

地球の北半球大気の流れデータへの応用例。流れはこの等高線にそって左から右に流れています。図の上にある文字列がCOT表現、図中にある赤い点と青い点がグラフです。この例ではa+という文字列で表現された構造がある異常気象の判定で重要とわかりました。
(宇田氏(東北大)・稲津氏(北大)・古賀氏(京大)との共同研究)

図

翼の揚力と翼周りの流線トポロジーに関する応用例。パターンの変化を文字列の遷移として可視化し、翼周りの流れパターンの変化を記述します。
(葛西氏(都立大)・金崎氏(都立大)・大山氏(JAXA)との共同研究)

企業での活用例

私達の技術はベクトル場に対して実施できますので、おおよそ「ながれ」とみなせるもの(例えば、気流、海流、血流から歩行者の流れ、生物の群の流れ、材料の応力分布など)にも適用可能です。航空・気象・海洋・航空・心臓の流れのデータへの応用が実際に行われています。また,場合によっては流れに関係なくても単なる画像(スカラー関数)からでもトポロジカルな情報を抽出できます。データから文字列を自動的に計算するソフトウェアの開発も行っていますので、大量のデータ処理を一括して行える場合もあります。現在は、この応用例を探索するために京都大学大学院理学研究科内に「数学よろず相談室(MathClinic)」を開室して、相談者のデータに対して我々の解析技術の適用性の相談も行っています。また、私達は二次元の流れへの応用がメインですが、三次元の流れデータへの応用研究も行っており、実際に粉体装置の設計のための数値シミュレーション結果に本技術による流線解析を行い、最適なデバイス設計へ向けた指針のコンサルティングなども行っています。

過去の展示会出展ポスター、対象特許等

■ 発表者のご紹介

坂上 貴之

発表者:坂上 貴之
<所属>
京都大学大学院理学研究科 教授・数理解析研究所 特任教授/理化学研究所 客員主管研究員
<略歴>
1994年京都大学卒業。北海道大学准教授・教授などを経て現職。現在、本技術の社会実装を探索するためJST未来社会創造事業探索研究を実施している。また、科学技術振興機構(JST)の研究事業「さきがけ」の数理構造活用領域で研究総括を務めている。趣味は読書と旅行。若い学生のときは様々なジャンルの本を片手に鉄道や船に乗って国内各所をかなり広範囲に渡り歩いたものである。今にして思うと贅沢な経験であった。

坂上教授の研究室Webサイト

横山 知郎

発表者:横山 知郎
<所属>
岐阜大学工学部 准教授
<略歴>
2006年東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻博士課程修了、京都教育大学准教授を経て現職。趣味は運動(サッカーをやりたいと思っているが、最近は筋トレとランニングばかりしている)。

横山准教授の研究室Webサイト

ゲストスピーカー

数本 優

発表者:数本 優
<所属>
日本ニューマチック工業株式会社 化工機部
<略歴>
2010年同社入社後、客先納入設備チェック、新製品開発等を務める。超音速ジェット粉砕機、気流式分級機について坂上先生、横山先生と共同開発し、SPK-12、EVX-1の販売に至った。趣味は自己研鑽。趣味が高じて中小企業診断士の資格を取得し、MOTとして活躍できるように学んでいる。座ってばかりいたので、最近は身体の研鑽に勤しんでいる。
<日本ニューマチック工業株式会社のご紹介>
日本ニューマチック工業株式会社は1964年に国内で最初のジェットミルを開発して以来、衝突板式ジェット粉砕機「SPK」、粒子間衝突式ジェット粉砕機「PJM」、気流式分級機「EVX」の開発・販売をおこなっています。これらの機器で樹脂・トナー・医薬品・金属などの有機・無機粉体の粉砕・分級をおこない、ミクロン~サブ・ミクロンオーダー(10-6m以下)の粒子径調整の需要に応えています。

日本ニューマチック工業株式会社のWebサイト

■ 過去のセミナー動画はこちら

お問い合わせ先

〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3 サイエンスプラザ
国立研究開発法人科学技術振興機構
知的財産マネジメント推進部 
知財集約・活用グループ
TEL:03-5214-8486 FAX:03-5214-8417 
E-mail:ライセンス(あっせん・実施許諾)について メールアドレス ※お問い合わせの内容によっては、回答に時間を要する場合があります。