独立行政法人科学技術振興機構
1.事後評価の主旨
本事業は、中堅・中小企業が有する新技術コンセプト(大学、公的研究機関、独立行政法人等の研究成果に基づく、新しい産業を生み出す可能性のある技術的な概念や製品構想をいう。)を企業と研究機関(研究者)が協力して、試作品として具体的な形とすることや、実用化に向けて必要な実証試験等を実施する事業である。
本事後評価は、成果の技術展開に資する程度を判断するとともに、今後の事業運営の改善に資することを目的として実施したものである。
2.評価対象課題
平成19年度に採択した14課題を対象として評価を行った。
企業名 | 課題名 | 協力研究者 | 所属研究機関 | |
1 | 株式会社 常磐植物化学研究所 | ピーナツ種皮に含まれる血小板産生促進因子の医薬品化を志向した試験 | 森田 育男 | 東京医科歯科大学 |
2 | イノベーションキッチン株式会社 | 複雑ネットワークによる創発型ビヘイビアマイニングエンジンの開発 | 吉井 伸一郎 他 |
北海道大学 |
3 | 株式会社 フローテック・リサーチ | 濃密飛翔微粒子特性のその場(in situ)可視化計測プローブの試作 | 西野 耕一 | 横浜国立大学 |
4 | 株式会社 林原生物化学研究所 | レセプター特異的アンタゴニストTNF変異体を利用した自己免疫疾患治療薬の開発 | 堤 康央 | 独立行政法人 医学基盤研究所 |
5 | アスザック株式会社 | 病害感染・生育予測機能を備えた作物の栽培支援装置(クロップナビゲーション)の開発 | 武田 和男 | 長野県農事試験場 |
6 | 日本電気化学株式会社 | 次世代液晶パネル用透明電極及び金属(銅・銀)電極の一括同時形成プロセスの開発 | 廣瀬 明夫 他 |
大阪大学 |
7 | SAILテクノロジーズ株式会社 | 新規蛋白質構造解析技術SAIL法の試料調製基盤育成に向けた無細胞抽出液製造及び関連技術の開発 | 甲斐荘 正恒 | 首都大学東京 |
8 | 有限会社 セラジックス | 標的指向性を有する遺伝子導入用炭酸アパタイトナノ粒子の実用化 | 赤池 敏宏 | 東京工業大学 |
9 | 有光工業株式会社 | 環境低負荷と高収益を実現する水稲栽培多目的農作業車の試作 | 西浦 芳史 | 大阪府立大学 |
10 | アイ’エムセップ株式会社 | 熱起動型溶融塩キャパシタの開発 | 伊藤 靖彦 | 同志社大学 |
11 | メディカルトラスト株式会社 | 指先の情報による血圧などの生体情報測定システム(MCBY)のIC化試作 | 陳 文西 | 会津大学 |
12 | 株式会社 エイツー | ホームサイスモメータ及び次世代緊急地震速報システムの開発 | 堀内 茂木 他 |
独立行政法人 防災科学技術研究所 |
13 | 株式会社 トリマティス | 超高速光波形ディジタイザの開発 | 北山 研一 他 |
大阪大学 |
14 | 株式会社 インフォワード | 近赤外光による眼底偏光スペクトル画像撮像・診断装置の開発 | 宗田 孝之 | 早稲田大学 |
注)企業名は採択時のもの
3.平成19年度採択課題の主な経緯
募集期間 | 平成19年2月5日〜3月9日(応募86件) |
課題採択 | 平成19年5月24日(14課題) |
モデル化開始 | 平成19年6月15日 |
モデル化終了 | 平成20年3月31日または6月30日 |
4.事後評価の進め方
モデル化実施の各企業から提出された完了報告書、自己評価報告書を基に、独創モデル化事後評価会を開催し、下記の評価項目により事後評価を実施した。
(ア)モデル化目標の達成度
(イ)知的財産権等の発生
(ウ)企業化開発の可能性
(エ)新産業及び新事業創出の期待度
5.評価の概要
今回の評価対象となった平成19年度実施14課題についての評価の概要は次のとおりである。
(1)実施した14課題中9課題が、モデル化目標を概ね達成できたと評価された。残り5課題については、当初の目標を達成できなかったと認められるものの、モデル化で得られた成果を基にした更なる取り組みにより、今後の製品化への道が開けると期待できる。
(2)平成19年度課題のモデル化の成果として創出した知的財産権は、9課題18件であった(出願予定のものも含む)。
(3)モデル化目標を概ね達成できたと評価された9課題のうち、「複雑ネットワークによる創発型ビヘイビアマイニングエンジンの開発」(イノベーションキッチン株式会社)、「ホームサイスモメータ及び次世代緊急地震速報システムの開発」(株式会社エイツー)及び「病害感染・生育予測機能を備えた作物の栽培支援装置(クロップナビゲーション)の開発」(アスザック株式会社)の3件については、既に企業化が成されている。また「環境低負荷と高収益を実現する水稲栽培用多目的農作業車の試作」(有光工業株式会社)、「超高速光波形ディジタイザの開発」(株式会社トリマティス)、「新規タンパク質構造解析技術SAIL法の試料調製基盤育成に向けた無細胞抽出液製造技術の開発」(SAILテクノロジーズ株式会社)及び「標的指向性を有する遺伝子導入用炭酸アパタイトナノ粒子の実用化」(有限会社セラジックス)の4件についても、実用化段階に達したと評価された。
(4)その他の実施課題については、モデル化実施期間終了後も研究開発の継続状況を把握し、委託開発事業等他制度の活用をはじめ、研究開発パートナーやユーザー紹介等の支援を行い、機構としてできる限りのバックアップを行うことが必要であるとの指摘を受けた。