独立行政法人科学技術振興機構
6.評価対象課題の個別評価
10熱起動型溶融塩キャパシタの開発
企業名 | : | アイ'エムセップ株式会社 |
研究者(研究機関名) | : | 伊藤 靖彦(同志社大学 理工学部 環境システム学科 教授) |
1)独創モデル化の概要及び成果
本新技術コンセプトの熱起動型溶融塩キャパシタは、電解質に比較的高温の溶融塩を用いた電気二重層キャパシタであり、非常に高いエネルギー密度と、キャパシタ特有の高い出力特性とサイクル特性が期待できる。さらに、電解質塩が固化した状態での、長期間の常温蓄電が可能であり、必要時に加熱・再起動して蓄えた電気エネルギーを取り出すことができる。このような特徴から、被災地や遠隔地等での長期貯蔵型非常用電源等への応用だけでなく、蓄熱媒体としても優れた溶融塩の特長を生かして、「電気と熱の有効利用」への展開も期待できる。
本モデル化では、まず、溶融塩中での電析により、単極容量が400 F g-1以上の高性能カーボン膜電極の作製に成功した。これは、163 Wh kg-1という非常に高いエネルギー密度(電析したカーボン重量から試算)に相当する。
次に、この高性能カーボン膜電極を用いたセルを試作して、電解質塩の固化・再溶融を経た繰り返し充放電試験を行った結果、容量や充放電効率について非常に安定した特性を示し、1,000サイクル程度まで使用可能の目処を得た。
2)事後評価
(ア)モデル化目標の達成度
エネルギー密度、蓄電特性など基本的な技術目標は達成されている。
(イ)知的財産権等の発生
特許は出願されていない。多層カーボン膜など、有効な特許の出願が可能と判断されるので、出願を急ぐ必要がある。
(ウ)企業化開発の可能性
可能性は残されている。企業化開発の基本データは得られているので、目標となる製品の絞込みと連携企業開拓を行い、更に技術データを蓄積することが課題である。
(エ)新産業及び新事業創出の期待度
現在の期待度は大きくない。しかし、前項に述べた課題を克服すれば、新事業創出は十分可能である。
3)評価のまとめ
新技術開発としては初期の成果を得ている。用途と具体的な製品の開発という次の段階へ進むためには、実用的な見地から技術を評価し、開発を指揮できる人材の参画が必須である。