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  3. 多専門連携による司法面接の実施を促進する研修プログラムの開発と実装
写真:仲 真紀子

仲 真紀子立命館大学
総合心理学部 教授

専門家の連携と司法面接の習得を支援する
研修プログラムを開発

児童虐待においては多くの専門家が関わりますが、ばらばらに面接をすることは被害者に大きな負担になります。専門家が連携し、被害者の負担に配慮しながら正確な情報を収集する司法面接の研修プログラムを開発しました。

概要

虐待など親密な関係性の中での被害は対応が容易ではありません。主な理由は、被害者から正確な報告が得られにくいからです。その背景には、被害者が加害者との関係性を断てず話ができないことや、児童相談所、警察、検察、医療関係者など多くの専門家による面接が多重に行われる結果、供述の変遷や精神的な二次被害が増加し、的確な対応が難しくなるなどの問題があります。 本プロジェクトでは、多くの専門家の連携を困難にする心理的要因を調査し、精神的負担に配慮しつつ正確な情報を多く収集する面接法(司法面接)の習得、共有、連携を支援する研修プログラムを開発しました。研修と基礎的研究を繰り返しながらプログラムの充実を図り、技能を持つ専門家と、研修を行うトレーナーを育成し、実事例の支援を通じて社会実装を進めました。司法面接における連携は、その後の福祉、支援、介入における連携をも支えます。

プロジェクトが公/私の「間」となり連携を支援

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研究開発の成果

3つの研究グループが4年間にわたり「基礎研究→プログラム開発→研修→フィードバック」というサイクルを回し、以下の成果を得ました。(1)連携を促す司法面接研修プログラムを開発し、5,000名を越える専門家に提供しました。(2)トレーナー研修を行いました。(3)司法面接の支援で、社会実装に貢献しました。(4)通訳・仲介者を介した効果的な面接や、司法面接と心理臨床の連携を促進するプログラムの開発やネットワークづくりにより、きめ細かい司法面接の実施をバックアップしました。
苦境にある人から、その声を正確に負担なく聴き取ることは基本的な人権を守ることであり、重要です。事実の調査は支援・介入の一点ですが、大事な「要」です。
これらの成果は,https://forensic-interviews.jp/でも公開しています

研究開発のアピールポイント

多くの専門家の連携を促す研修プログラム

正確な情報を、精神的負担をかけることなく聴取する司法面接。多専門連携による実施を推進しました。
虐待事案において、福祉や司法の連携を難しくする要因の一つが「各機関の目標や立場の違い」です。本プロジェクトでは、児童相談所職員、警察、検察官などの専門家がチームを作り、協議・協同しながら司法面接の習得を目指すプログラムを開発し、事実調査における連携の強化に努めました。プログラムの開発、多専門連携を取り入れた司法面接研修、そして研修を行うことのできるトレーナーの育成が大きな成果です。通訳・仲介者を通じた司法面接や、司法面接と心理臨床の連携も促進しました。

成果の活用場面

架空の例でご説明します。
○○県で児童相談所,警察,検察が連携をとって児童虐待に当たっています。
A子は学校で、担任に「家で叩かれたこと」を打ち明けました。担任は「大事なことだから一緒に考えさせてね」と迷うことなく児童相談所に連絡。「家に帰りたくない」というA子を、児童相談所は一時保護。けがの程度を確認し、警察、検察に連絡しました。三者は即刻協議。翌日、協同で司法面接を行いました。当日、A子は児童相談所職員に連れられて面接室にやってきました。検察官が話を聞き、児相職員と警察官がモニターで確認しながら面接を支援しました。面接後はこの情報を共有し、各機関が強みを活かして支援・介入を行い、子どもにとって最もよい解決が図られました。

司法面接は、面接者だけではなく、多機関の専門チームで協力しながら実施

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成果の担い手・受益者の声

担い手
事実を確認するためのこの面接の方法は、虐待を含めて子どもから事実を聞く立場の人間全員が持つべきスキルです。深刻な事件ではもちろん必要ですが、それに限らず子どもから話しをきく方法としても大事な技法です(児童相談所職員)
受益者
「子どもが『話しやすかった』と言った」「司法面接以降、回復していく」「子どもに何度も聞かずにすんだ」「誘導のない面接ができた」「他機関の捉え方を知ることができた」(研修の受講者)

目指す社会の姿/今後の課題

平成27(2015)年、厚生労働省、警察庁、最高検察庁が、事実確認における多機関連携を推進する通知を出し、多専門連携による司法面接は広く行われるようになりました。この良き実践をさらに進めるには、今後以下のような問題の解決が望まれます。

  1. 司法面接で得られた情報を、多機関チームで共有すること。
  2. 司法面接の成果が裁判での証拠として用いられるようになること。
  3. 心理臨床、医療などの専門家も、司法面接チームに含まれるようになること。
  4. 地域において、人権を守り、暴力を防ぐ意識、活動、体制を強化すること。地域、支援者の支えのもとで、被面接者はより多く話せることが確認されています。

内容に関する問い合わせ先

立命館大学人間科学研究科 司法面接支援プロジェクト(司法面接支援室)
[連絡先] child@forensic-interviews.com ※[at]は@に置き換えてください。

事業に関する問い合わせ先

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)
[連絡先] pp-info[at]jst.go.jp ※[at]は@に置き換えてください。