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在日ドイツ人高校生にSATREPSレクチャー会を開催
2013年04月12日(金) 東京横浜独逸学園

横浜のドイツ人学校東京横浜独逸学園(Deutsche Schule Tokyo Yokohama)で04月12日、地理を学んでいる在日ドイツ人高校生(16〜18歳)約60名を対象に、SATREPSプロジェクトのレクチャー会を開催しました。

JST地球規模課題国際協力室からSATREPSについて説明を行った後、現在進行中の2つのSATREPSプロジェクトに携わっている研究者・留学生に、彼らの国際共同研究活動について熱く語っていただきましたので、レクチャー会の模様をレポートします。

■「日本とトルコで、それぞれの国が推奨している地震発生時の避難方法は異なるんですよ」


東京横浜独逸学園でのSATREPSレクチャー会に参加したドイツ人高校生たち。60名近くの生徒で会場は一杯に。


SATREPSについて軽快な語り口で説明する高木調査員。「研究成果をどうやって社会に役立てるかが大事」と力説。

海洋研究開発機構(JAMSTEC):有吉慶介研究員、吉永直子研究企画スタッフ
(2012年度採択トルコプロジェクト「マルマラ海域の地震・津波災害軽減とトルコの防災教育」

JAMSTECの研究員である有吉慶介さんと、研究企画スタッフの吉永直子さんによるトルコプロジェクトのレクチャーは、「地震発生時、あなたならどう避難しますか?」という問いかけから始まりました。

「机の下にもぐって地震がおさまるのを待ちます。」とクラス全員一致で元気よく答えるドイツ人高校生達。「そう思うでしょ?でもトルコでは、すぐに建物から外に出るか、丈夫な家具のそばに行くように教えるんですよ。」と笑顔でJAMSTECの有吉さんが回答すると、クラス中が一気に驚きの声に包まれました。トルコでは、耐震設計が不十分な建物が多く、崩壊の危険性が高いのです。実際、2011年10月23日のトルコ東部を震源とするヴァン(Van)地震では、建物崩壊もあり、約600人の犠牲者が出ました。

イスタンブールに近いマルマラ海は、近い将来、巨大地震・津波が起きる可能性が高いとされていますが、2012年度にスタートしたトルコプロジェクトでは、トルコのマルマラ海に海底観測体制を構築し、発生過程の解明や、ハザード評価を行うとともに、成果を映像化し防災教育に活用するなどして、国民の防災意識を向上させ、災害対策を推進すること目指しているのです。

日本やトルコでの地震の写真や映像を見ながら、本トルコプロジェクトについてわかりやすく且つ楽しくお話される有吉さんらのトークに、ドイツ人高校生達はあっという間に魅了され、次々と出されるクイズにも活発に答えている姿が大変印象的でした。

生徒から最後に出された、「トルコでの地震に関する研究結果を日本で実際どのように活かしていくのですか?」という質問に対して、有吉さんはトルコの北アナトリア断層周辺で、東から西へと徐々に震源地が移動して地震が発生しているケースを研究することで、日本の東海・東南海・南海地震が連動する巨大地震のメカニズムの解明や、都市地域での地震対策にも役立てていきたいと熱心に語っていました。

ドイツ人学校の先生方からは、「地理の授業で地震について教えたが、我々の授業から得た知識のみならず、地震災害に取り組んでいる研究者から、実際に研究から得られた知識がどのように社会で活かされていくのかを、直接話していただくことは、生徒にとって、視野を広げるためのとても貴重な機会になったと思う。」という感謝の言葉をいただきました。

■「アフリカは気候や生態系の変化によって最も影響を受けやすい大陸」


SATREPSトルコプロジェクトの有吉研究員と吉永さん。まるで掛け合い漫才のように楽しいセッションでした。


SATREPSガーナプロジェクトの留学生、BoafoさんとBoakye-Danquahさん。 ガーナとアフリカの未来について真剣に語ってくれました。

国際連合大学(UNU):Yaw Agyeman Boafoさん(博士課程ガーナ人留学生)、John Boakye-Danquahさん(修士課程ガーナ人留学生)
(2011年度採択ガーナプロジェクト「アフリカ半乾燥地域における気候・生態系変動の予測・影響評価と統合的レジリエンス強化戦略の構築」

「君たち、アフリカといえば何を連想するだろう?」というBoafoさんの質問に、「砂漠」、「多種多様な動物」、「暑い気候」など、思いついたキーワードを楽しそうに次々と回答していく生徒達。

「そうだね、全部正解だよ。ただ、それ以外で君たちに覚えていてほしいことがある。それはアフリカは、気候や生態系の変化によって最も影響を受けやすい大陸であるということだ。我々の未来は、危機に直面している。」Boafoさんの真剣な語りに、先ほどまで生徒からの活発な発言で活気に包まれていたクラス内の雰囲気が急に一気に静まりかえっていくのを感じました。

本ガーナプロジェクトを通して、ガーナの北部地域を中心に、気候・生態系調査を行ったうえで、気候・生態系モデルを構築し、今後の農村開発や、洪水・干ばつで悩まされている地域の対応策を編み出そうとしているBoafoさんと Boakye-Danquahさんの熱心なお話に、生徒たちも真剣な眼差しで聞いているのがとても印象的でした。

アフリカの現状や、フィールドワークでの模様、日本人研究者とガーナ人研究者とが実際に共同研究をしている模様など、写真もふんだんに取り入れて、一つ一つ丁寧に説明されている光景を見て、ドイツ人の先生方も感激し、とても感銘を受けていらっしゃいました。

レクチャーの最後の方で、「だれか、Carbon cycleについて説明できる人は?」Boakye-Danquahさんが生徒らに問いかけると応答がありません。ドイツ人の先生が「君たち、炭素循環のことだよ、学んだよね?今が、説明できるチャンスだよ!」と問いかけていたものの、何も回答が出なかったので、ドイツ人の先生から「申し訳なかったよ、生徒たちはとてもシャイなんだ。」と、微笑ましい場面も垣間見られ、SATREPSレクチャー会は大成功に終わりました。

SATREPS事務局 高木 麻里

  • SATREPS 国際科学技術共同研究推進事業 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム
    (Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)
  • http://www.jst.go.jp/global/about.html
  • 2008年より文部科学省・科学技術振興機構(JST)、外務省・国際協力機構(JICA)が連携して、開発途上国と科学技術協力を推進中。日本の優れた科学技術とODAとの連携により、開発途上国と環境・エネルギー、防災、感染症、生物資源分野の地球規模課題の解決につながる国際共同研究を実施。平成24年度までに、35カ国68のプロジェクトを採択。
  • SATREPSレクチャー会で紹介したプロジェクト
    「マルマラ海域の地震・津波災害軽減とトルコの防災教育」
    (金田 義行・(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)・技術研究統括 / 地震津波・防災研究プロジェクト・プロジェクトリーダー)
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2408_turkey.html
  • 「アフリカ半乾燥地域における気候・生態系変動の予測・影響評価と統合的レジリエンス強化戦略の構築」
    (武内 和彦・東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)・副機構長)
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2302_ghana.html